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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第9回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

祖母が数年前に脳梗塞で亡くなりました。患う前は「終活」についての本を読んでいた様子で、祖母なりに自分が亡くなった時のことを考えていたようです。しかし結局、脳梗塞でうまくしゃべれなくなってしまい、どういう最期にしたいのか希望も聞けないまま亡くなってしまいました。良い見送り方ができたのかどうか、いまだに自問しています(31歳・女性)

 

【回答】

そうでしたか。お見送りになるその日まで、どんなお時間をご一緒にお過ごしになられたのでしょう。おばあさまのご表情や手のぬくもり、息使いなど、思い起こされる場面がたくさんおありになることでしょうね。

 

おばあさまは患われる前から「終活」についてお考えだったご様子。賢明な方だったのですね。なかなかそこまで思い及ばないことの多い、日々の生活のなかでご興味をもって本を読まれていたとは、さすがです。そこに、おばあさまの生き様を拝見する思いです。そんなおばあさまにはいろいろ思うところもおありだったでしょうけれど、それを共有できなかったことがあなたさまの今の苦しみになっておられるようですね。

 

でも、思い出してみていただきたいのです。私たちが心を通わすために使うのは、なにも言葉だけではありません。眼差しや表情、息使い、姿勢…ありとあらゆることが「伝える」「受け取る」ための道具になります。たしかに、おばあさまはご病気によって「言葉」を失われたかもしれませんが、それでも一緒に過ごされたお時間の中で、あなたに伝わってきたものがあったでしょう。必ずあったはずですよ。どうか思い出してみてください。それが、おばあさまの「最期はこうありたい」というご希望の表現だったのです。

 

見送られて数年がたった今でもおばあさまをお心にかけ、自問自答なさっているあなたのお姿から、おばあさまへの大きく深い愛が伝わってきます。そんなあなたに見送られたおばあさまが、残念な思いを残されているわけがない。そうでしょう?

 

仏教には「回向(えこう)」という考え方があります。生きている者が人助けをしたり、一生懸命に働いたりして「徳」をつむと、その「徳」があちらの世界に逝った方の周りを明るく照らし、幸せにするという考え方です。それでね、「笑顔で楽しく暮らす」ことも、「徳」をつむことになるのですよ。あなたの見送り方は最善だった。お顔をあげて、笑顔でいきましょう。その「徳」が、かならずやおばあさまを温かく照らし、優しく包んでくれます。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。

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