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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第37回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

私はさまざまな死別経験から、遺族ケアや生・死について深く学び関わることが自分の使命であると思っています。これまでもグリーフケアをはじめ、いろいろ学び、民間資格の取得にも挑戦しました。しかし正直にいうと、十分に理解できていないです。どうしたら、そうしたことをもっと学べるのか? どうしたらもっと関わることができるのか? いま何をすべきなのかわからなくなっています。何かアドバイスや情報をいただけないでしょうか。(34歳・女性・看護師)

 

【回答】

「死について深く学び関わることが自分の使命」。ご自分のミッションをはっきりと自覚なさっている。尊敬します。そして、ミッション達成に向けて努力もしていらっしゃる。ぶれていませんね。すごいです。

 

そして今、「どうしたら、そうしたことをもっと学べるのか? どうしたらもっと関わることができるのか? いま何をすべきなのかわからなくなって」いらっしゃる。壁にぶち当たっていらっしゃるのですね。

 

学ぶとき、最善にして最短の方法は「経験すること」だと私は思っています。実際に体験することで得る経験値はどんな専門書にも勝る、と。

 

でも、なかには自分で経験してみることができないこともありますね。「死」もそのひとつです。本当は一度死んでみるのがいいのでしょうが、死んだら今の状態にはもどってこられないルールのようなので、せっかく死んでみても経験値として活用できません。

 

「死」だけに限らず、宇宙のことも、人間の体のことも、病気のことも、実はわからないことだらけなのが現状ではないでしょうか。私たちはそれを、いかにもわかっているようなふり、もしくは勘違いをして過ごしているだけです。「わからない」ものを「わからない」と言うことは、どんなに難しいことなのでしょう。「わからない」ものを「わからないまま」に見ていることは、どんなに我慢のならないことなのでしょう。

 

その点、あなたさまは「十分に理解できていない」と認めていらっしゃる。天晴です。「わかった」と勘違いをして上っ面なことをしてしまうよりも、ずっと肝のすわった態度です。

 

死について深く学び関わるためには、「わからない」「わかるわけがない」という自分に対する戒めと、それでも「わかりたい」「1ミリでも近づきたい」という真摯な、もはや祈りといってもいいような渇望が原動力になるような気がしています。

 

この道には、決して満足できるシチュエーションはありません。そのことを忘れずに在り続けることが、今すべきことなのだと思っています。

 

同志よ、共に学ぶ仲間として、日々粛々とやってまいりましょう。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。

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