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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第59回>

数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

私は入社してから33年、ずっと同じ仕事に携わってきました。その仕事にはやりがいを感じていて、会社で自分の存在意義も感じていました。そんな中、2年前に会社の配置変えがあって、初めて別の業務を担当することになったんです。ただ、会社からのサポートが期待したほどなかったこともあって、その仕事に私はどうしても馴染むことができなくて。先月、会社に退職届を出しました。入社してから35年、定年まではあと2年でした。もちろん、会社の同僚や家族には「あと2年の辛抱だよ」「新しい仕事を見つけるのは難しい」「今の会社で何が不満なの?」と反対されました。私にもコロナの影響で職を失う人や収入がない人が多くいる中、後ろめたさや将来に対する不安があったことは確かです。ただ、それでも辞めたかったんです。新しい作業には満足できず、やりがいのあった作業からは離れて、どうしても自分の存在価値が感じられなかったんです。私は間違った選択をしてしまったのでしょうか。(58歳・女性・会社員)

 

【回答】

「辞めたくなかった」「辞めて失敗した」と、一番思っていらっしゃるのはあなたのようですね。

 

配置変えされてからの業務に、なじめなかった。そういうこともあるでしょう。それで、退職を決断された。うん。それもありですよね。35年勤めていたとか、定年まであと2年だったとか、同僚や家族が反対したとか、いつだって相反する見方はできるものです。

 

大事なのは、あなたがなじめないと判断して、辞めると決断したということ。よくご決断されましたね。自分の存在価値を感じることができないような場所から離れたことに、間違いはなかったと思いませんか。

 

変化には、大なり小なり痛みがつきものではないかしら。物事に陰陽がある限り、“良いことばかり”もなければ、“悪いことばかり”もない。どうしたって少々の後悔を伴いながらの、新しいスタートになるような気がします。

 

さて、せっかく新しい道の前に立ったのに、いつまで後ろを振り向いているおつもりでしょうか。

 

私たちに与えられた時間には限りがあります。そして、時間が過ぎるのは本当に早い。おお、もったいない、もったいない。間違った選択だったのだろうかなんて悩んでいるその時間と労力を、これからどうやって楽しんで生きていくかを考えることにお使いになった方がよっぽど健全です。だって、いくら悩んだって巻き戻しはできないのですから。

 

あなたは、間違った選択なんてしていないですよ。あなたの人生の中で、あなたが決めたことは、すべてベストチョイス。「間違った選択はしていない」と、あなたが決めればいいのです。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。

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