「賀来さんとは共演歴があって、相性がいい俳優さんだと感じていました」と語った佐野史郎 画像を見る

「『ずっとあなたが好きだった』でプロデューサーを務めたのは、後に数々の名ドラマを手がけることになる貴島誠一郎さん。『VIVANT』原作・演出の福澤克雄さんはまだ助監督、『SPEC』プロデューサーの植田博樹さんに至っては、現場で弁当を配っていました。TBSの将来有望な若手が結集したドラマだったんです」

 

こう語るのは、佐野史郎さん(68)。同ドラマのオファーは、宮沢りえ主演の『東京エレベーターガール』(TBS系)に出演したことがきっかけだったという。

 

「中嶋朋子さんと不倫関係にある課長の役だったのですが、封筒に入れた手切れ金を渡して冷徹に別れようとする演技が、貴島さんの目に留まったようです」

 

その非情さが発揮されたのは、第1話最後の朝食のシーン。

 

「ボクが『おいしかったよ。でも味噌汁はまずかったけどね』と言い放ったときですね。妻役の賀来千香子さんの表情が素晴らしくて“これでイケる”と確信。賀来さんとは共演歴があって、相性がいい俳優さんだと感じていました」

 

もう一人、相性がピッタリだったのが、母親役の野際陽子さんだ。

 

「ボクが自転車で倒れて指をケガすると、その指を野際さんが舐めて止血するシーン。とっさの思いつきで、舐めてもらった指をアドリブでボクが舐め返したんです」

 

それが強烈なマザコンキャラを印象付けるシーンとなった。

 

「これも相手が何度も共演していた野際さんだからできたことで、初対面の大御所女優さん相手だったら、さすがに怒られるので無理でしたよ」

 

木馬にまたがる冬彦さんの姿も、インパクトが大きかった。

 

「あるときスタジオに行くと、木馬が置いてある。プロデューサーの許可を得ないまま、ディレクターが勝手に津川雅彦さんの経営する玩具店に発注していたんです。始末書ものだろうけど、あったら使わないといけないですから(笑)。ベテランのスタッフ陣だったら、勝手に設定や演出、セリフを変えることは難しいですが、スタッフ全員が若かったから現場のノリもよくて、みんなで案を出しあっていました」

 

だからこそ、あれほどエキセントリックな冬彦さんキャラができあがったのだ。

 

「3話の放送が終わったあたりで、撮影スタジオに行くために電車に乗ると、若い女性からは“冬彦が来た”と気持ち悪がられたり、優先席に座るおじいさんからにらまれたり(笑)。それで、次の日から車で移動することになりました。テレビの影響力が強かった時代だったんですね」

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