「1984年に角川映画『メイン・テーマ』でデビューしたこともあって、角川春樹事務所に所属していましたが、時代は映画からテレビにシフトしていき、事務所からは(薬師丸)ひろ子ちゃんが抜け、(原田)知世ちゃんが抜け……。それでボクも小さなプロダクションに所属したタイミングで、『ラジオびんびん物語』(フジテレビ系)のオファーをいただいたんです」
こう語るのは、野村宏伸さん。同ドラマのヒットで、その翌年に放送が開始されたのが『教師びんびん物語』だ。
「“ラジオ”が終わって“教師”が決まるまでのあいだも、主役の田原俊彦さんにゴルフに誘っていただくなどつながりがありました。当時、田原さんはボクを役名の『榎本』と呼んでくださっていたのですが、ボクは田原さんを役名や“さんづけ”で呼ぶのも変だと思い、なんてお呼びしたらいいのかわからないまま。“教師”の撮影のころには、敬語からタメ口に変わっていました」
田原は、主題歌『抱きしめてTONIGHT』が大ヒットして、歌番組にも掛け持ち出演。
「ドラマの撮影現場ではみんなを盛り上げていました。かなり忙しいはずなのに、夜はしっかり遊びに行っていたようで(笑)。それでも現場で台本を開いているところは見たことがないから、いったい、いつセリフを覚えているんだろうと不思議でした」
撮影は深夜に及ぶことも。
「ボクのセリフのときに、田原さんが変な顔をして笑わせるんです。それが深夜ともなると、お互い疲れてきているから笑いが止まらない。監督に『いいかげんにしろ!』って怒られたりしました。そんな場面はNG集にもよく使われていました」
子役たちとも、良好な関係だったという。
「最終回のお別れのシーンは本当の涙。何度も練習してできるシーンではないので、リハーサルなしの一発本番だったと思います」
平均視聴率20%を超える大ヒット。パート2の放送も決まり、野村さんには数々のドラマ出演オファーが舞い込んだ。
「いい面もありましたが、来るのは同じような役ばかりという悪い面も。すごく抵抗があったし、まだ若くて変なプライドもあった。映画『ファンシイダンス』の本木雅弘さんの役、『振り返れば奴がいる』(フジテレビ系)の石黒賢さんの役も断ってしまったほど。いまなら、絶対に受けるのに(笑)」
そんな失敗も乗り越え、昨年、芸能生活40周年を迎えることができたのだ。
『教師びんびん物語』(フジテレビ・1988年)
ドーナツ化現象で生徒数が減少している東京・銀座の小学校を舞台に、単純で理想主義な熱血教師・徳川龍之介(田原俊彦)とその後輩教師・榎本英樹(野村宏伸)コンビが奮闘する学園ドラマ。“金八”でデビューしたトシちゃんが先生役として登場するだけで、なんだか胸熱!
【PROFILE】
のむら・ひろのぶ
1965年生まれ、東京都出身。1984年にデビューすると、“びんびん”シリーズでアイドル的人気を集める。低迷期はあったものの本格派俳優として数多くの映画、ドラマに出演する。
