「このカレー事件とは何だったかといえば、保険金詐欺みたいな悪さをいつまでもしないで、目を覚ませと言われたような…そんな悪さをやっているからこんな目に遭うんやと、天罰が下された出来事だったのかもしれません。そういう意味では、目からウロコが落ちたような事件ですね。これによって、お金がある、なし関係なく、人間らしい暮らしができるようになりましたから」

両親の逮捕で、家族は一瞬にしてバラバラになったが、10年の歳月を経て、いまは事件前よりも、はるかに家族の絆は深まったと、健治さんはちょっと照れながら話す。

「ホンネを言えば、家族の絆が深まるほど、僕はしんどいんです。してやれることがあまりないから辛いんです。子供たちにこうしてやりたい、ああしてやりたいということが、いまはできないから…だから、あんまり深めるんじゃなくて、ある程度距離を置いて、親子でも、飛び越えてはいけない線だけは飛び越すなというやり方にしているんです。例えば、うちでご飯を食べる時は食事代を取る。そこはきちんと線を引こうやと。キザな言い方だけど、結果的にカレー事件で家族の絆が深まったのは確かです。これによって、いままで見えなかった家族の気持ちがはっきりと見えましたから。結局、お金がたくさんあっても子供の気持ちは買えませんよ、ということもよくわかりました

三女の幸子さんが、眞須美被告を喜ばせたい一心で、当初よりレベルが上の高校を受験。合格の一報を聞いたときは、昔、競輪で3千700万円儲けたときよりも、健治さんは比べものにならないほど嬉しかったそうだ。

「こうゆう感動は、園部にいるときはまったく理解できなかった。お金というのは、家族が全員揃ってのお金であって、1人でもはぐれていたら、お金がいくらあっても値打ちがない。眞須美が出て来て、子供たちも全員集まった時にこそ、初めてお金を使う充実感が味わえる気がします」(健治さん)

かつてはギャンブル三昧だった男が、いまはギャンブルのギャの字も頭にないという。そんな金があるなら、幸子さんに携帯電話を買ってあげたいとも…カレー事件の裏側では、
林家の家族の絆はより深まりつつある。

シリーズ人間【林眞須美和歌山カレー事件・林家の10年更新中

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