1日1枚のペースで4日で1組が完成していく。泰子さんは菜箸を持ち、それで白紙上に字の位置を示しながら、翔子さんの隣に座り続けた。叱ってはまた泣き、休憩し、また書き続ける。そのうち、一つ一つの文字としてはアンバランスではあっても、ひと塊で見ると、一種、凄味さえある作品が生まれようとしていることに泰子さんは気づいていた。般若心経を書くには、楷書の基本となる右肩上がりを理解さ...

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