証拠のない現金授受の世界で、恐ろしきは女が克明に記したメモかーー。松本清張の『黒革の手帖』を地でいく事態が、徳洲会マネーを舞台に動きだした。中心人物は徳田秀子氏(75)。徳田虎雄前理事長(75)を支えた糟糠の妻であり、徳洲会マネーを差配した“女帝”だ。

 

「徳洲会から猪瀬都知事に5千万円が提供された情報は各メディアがつかんでいた。朝日新聞がスクープできたのは、9月の強制捜査後に、猪瀬知事側から秀子夫人に5千万円が返却された事実をつかんでいたから。徳洲会への捜査のなかで同会副理事長の秀子夫人から目が離せない状況になっている」(全国紙社会部記者)

 

9月12日に始まった東京地検特捜部による徳洲会への捜査で、11月12日、徳田家長女の越沢徳美、次女のスターン美千代容疑者ら6人が逮捕された。秀子夫人も逮捕は免れないという見方が有力だったが、その名前はなかった。だが、娘らの逮捕直後、虎雄氏が15階に執務室を構える湘南鎌倉総合病院では、捜査の行方を左右する事態が起こっていた。

 

「病室の個室で、秀子さんが睡眠薬を飲み、自殺を図ったようなのです。個室は中から鍵がかけられ、鍵をこじ開けようと大騒ぎとなったため自殺未遂の話が外部に漏れ出した。駆けつけた者が秀子さんを吐かせ、九死に一生を得たようです。自殺を図ったのは、やはり逮捕された2人の娘に申し訳ないという思いが強くあったのではないでしょうか」(徳洲会グループ企業元顧問)

 

徳洲会グループ広報に、秀子氏が自殺未遂をした事実について問うと、「お答えすることはありません」との回答だった。肯定も否定もしない答えに、徳洲会内部の動揺が透けて見える。

 

さらに動揺しているのが、猪瀬直樹東京都知事だろう。昨年11月6日、猪瀬氏が虎雄氏に初めて面会したときに立ち会ったのは秀子氏であり、特捜部の強制捜査後の9月26日、5千万円を返却した相手も秀子氏だ。しかし猪瀬都知事がにわかに公開した「借用書」は、徳田毅氏と交わしたもの。そこに秀子氏を介在させたくない意図があるのか。

 

借用書の真贋をめぐり東京都議会は紛糾必死。証言の拒否を禁じる「百条委員会」が設置されれば、猪瀬氏も追求をかわすのは難しい。借用書を公開したことが墓穴を掘ることになる可能性もある。さらに、徳洲会マネーが渡った先は、中央政界にとどまらない。

 

「徳田家が選挙地盤にしてきた鹿児島、そして徳洲会の医療施設が多い沖縄両県の知事選で、法に反した選挙支援がなかったか、地方議員への事情聴取が始まっています。聴取のもとになっているのが“秀子メモ”。徳洲会マネーを配った相手先を克明に記したもので、当局はこのメモを押収している。事件はまだ拡大していく」(鹿児島の政界関係者)

 

にわかに都知事が公開した“公的な”借用書を、メモが凌駕するときがくるのか。“女帝”が残したメモが、徳洲会マネーの動きを明るみに出そうとしている。

 

(週刊『FLASH』12月17日号)

関連カテゴリー:
関連タグ: