「米国の戦争に巻き込まれると不安をお持ちの方に申し上げる。絶対にありえない。日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだ。“戦争法案”といった無責任なレッテル貼りはまったくの誤りだ」

 

14日、安全保障の関連法案が閣議決定されたのを受け、安倍晋三首相は記者会見でこう語った。これからはじまる国会は大荒れ必至の様相だ。この安倍首相の会見を見た、政治評論家の森田実さんは、怒り心頭で語る。

 

「今回閣議決定され、国会に提出された安全保障関連法案は11本。これらの法案は、自衛隊が状況に応じて戦争ができる、あるいは戦争に加担できるように整備されています。本来であれば、1本1本、時間をかけて審議すべき重要な法案ばかりなのに、11本をまとめて審議するというやり方で、一気に成立させようとしている。なぜなら先月、安倍首相は“夏までに(法案)成立させます”と日本の国会を無視して、米国議会で国際公約をしてきたから。こんな強引な手法で日本の進路を決めるのは、あまりに国民無視、国会軽視で、腹立たしい限りです」

 

法案の1つ、集団的自衛権の行使に関する「武力攻撃事態法改正案」の中身を見ると、行使の判断基準が曖昧で、さまざまな解釈が成り立つ条文が書かれている。

 

たとえば【1】日本が直接攻撃を受けていなくても、日本と密接な国が攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態【2】国民を守るために他に適当な手段がない――。このような場合に限り、自衛隊は武力攻撃ができるとされているが、具体的な基準は明記されていない。

 

「つまり、今回の法案は、日本国民のためではなく、すべては米国のための安保法制なのです。かつて日本を牛耳っていたアーミテージ元国務副長官が、先日テレビのインタビューで『日本の自衛隊が米国人のために命を懸けることを宣誓した』と発言しているんです。これが今回の安保法制の本質なのです」(森田さん)

 

今回、いちばん問題視されているのが、憲法9条を真っ向から否定する法案を強引に作ろうとしている点だ。

 

「憲法9条とは戦争の放棄。そして国の交戦権は認めない法律です。ところが今回の安保法制は米国のために日本も戦争をしますという内容。これは明らかに憲法違反。こんなことがまかり通ってしまえば、今後日本はとんでもない方向へと突き進むことになる」

 

と森田さんは警鐘を鳴らす。

 

「ひとたび戦争が始まり、戦地で自衛隊員が1人でも死ねば、世論の空気は一気に変わってしまう。国民は敵国に対して“この野郎!”となるでしょう。そして大マスコミは敵国憎しで世論を煽る。ナショナリズムというのは、1度感情に火がついたら抑えられなくなる。戦前もそうでしたから」(森田さん)

 

自衛隊が戦地に派遣されるようになれば、隊員数が減るのではないか、との指摘もある。となれば、将来的には徴兵制が採られることもあるのではと、森田さんは言う。

 

「今の時代の女性たちは、社会的な発言をする術を持っています。母親たちが“自分の子供を戦場には送らない”と声高に訴え、反戦の意思表示をすれば日本は救われる。『米国のためにわが子の命を捨てるなんてNO!』そういう母親の輪が全国に広がれば日本の“不戦の誓い”は守られるでしょう。今からでも遅くはない。多くの女性が立ち上がれば、戦争法案も覆る可能性があると思います」

 

戦後70年。私たちは今、重大な岐路に立っているのだ。

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