政務活動費913万円を騙し取ったなどとして罪に問われた野々村竜太郎元兵庫県議(49)。その初公判が1月26日、神戸地裁で開かれた。日本中をあ然とさせた“号泣会見”から1年4カ月。姿を見せた彼はスキンヘッドで体重も激増した様子。あまりの変貌ぶりに、傍聴人から驚きの声もあがっていた。
裁判内容も異様だった。質問のほとんどに「記憶にありません」、「覚えていません」などと90回以上も答え、「記憶障害が生じている可能性があります」と主張。さらに診断書を提出する意向を明かしていたが、いつ診断されたのか問われた際には「平成27年12月9日」と記憶も確かに即答していたのだ――。
果たして、そんな都合の悪いことだけ忘れるなんてことが起こり得るのだろうか。精神疾患に詳しい『銀座泰明クリニック』の茅野分院長が本誌にこう語る。
「記憶障害は健康な状態の人がいきなりなるようなものではありません。彼ははっきり答えている部分もありますし、太っているということは食事もしっかりできて健康な状態ということ。直接診断していないですが、ほぼ“詐病”ではないでしょうか。それに心神喪失状態や責任能力がないとも言えなさそうです。それよりも考えられるのは、演技性人格障害です。架空のことを真実であるかのように語っていくうちに、自分まであざむいてしまうという状態になるもの。簡単にいうと、自分も嘘か本当かわからなくなるのです」
つまり、野々村被告自身も何が何だかわかっていない可能性があるという。たしかに彼はすでに議員を辞職しており、被害額も弁済している。真摯に対応すれば執行猶予はつくとみられていたにもかかわらず、今回の対応で判決に悪影響を及ぼしてしまっているのだ。 今度、彼はどうなってしまうのか。日本大学名誉教授の板倉宏氏はこう分析する。
「被害額を弁済しているし、今さら心神喪失で責任能力がないと訴えてもまず通らない。いったい何がしたいのか……さっぱりわかりません。普通にしていれば執行猶予はついたでしょうが、心証を悪くしたことで1年6カ月程度の実刑判決もあり得るかもしれません」
世の中そんなに甘くはない……。野々村被告はそんな思いを噛みしめているだろう。