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「ほんの2時間でも仕事が早く終わるのだから、サラリーマンやOLにとって、聞こえがいいでしょう。しかし現実的には、その分の仕事は、ほかの日に振り替えられるだけで、本当に楽になるわけではありません。こんな詐欺的手法を政府が率先して行うことが嘆かわしいです。それを『プレミアム(=上質・割り増し)』なんて笑っちゃうネーミングですね」

 

こう嘆息するのは慶應大学経済学部教授の金子勝さん(64)。現在、名前はキラキラ、でも効果なしの「へんな安倍政策」が急増している。金子さんが嘆いているのは、政府が検討している『プレミアムフライデー』構想。毎月末の金曜日は午後3時に退社・退庁し、空いた時間を、買い物や旅行に充てようというものだ。

 

流通業界、旅行業界、外食産業などが連動して、イベントを開催することも検討されており、経団連は今年10月にも具体的な実行計画を策定する方針だという。

 

「金曜日に仕事を早く切り上げさせて、買い物や旅行に出かけさせたい……、つまりこの政策は国民ではなく経済界に向けたものです。国民ではなく、経済界にとってプレミアムだから、経団連が積極的なわけです。政府や経済界は休日を作れば余暇が増え、お金を使うと考えているんでしょう。今年から8月11日を山の日に制定したのも同じ理屈です。お盆休み前に祝日を作ることで、みんなが長期休暇をとり、よりお金を使ってくれると考えた。しかしほとんどの人がカレンダーどおりにしか休めない散々な結果になりました。そして今度は、仕事を2時間早く切り上げて遊びに行け!?実際に国民みんなが月末の金曜に旅行に行ったら宿や鉄道は満員でたいへんなことになります。そんなことも視野に入れていない、へっぽこ政策ですよ(笑)」(金子さん・以下同)

 

そのほかに、総務省が’17年からのスタートを目指しているのが「ふるさとワーキングホリデー」制度。都市部に住む若者に長期休暇を取らせ、1週間から1カ月間、地方の製造業、農業などで働く場を提供するというものだ。政府は東京一極集中の是正策として期待しているというが……。

 

「要するに、若い人に地方で試し働きをしてもらって、うまくいけば地方に移住してもらいましょうということ。確かに、現在の地方の疲弊ぶりは非常に深刻です。しかしその一環として出てきたアイデアがこれですか?と耳を疑いました」

 

そもそも一般的なワーキングホリデーとは、若者が外国で働きながら観光や勉強ができるよう、それぞれの政府が専用のビザを発行して支援するという制度だ。

 

「本来は若者が行ってみたい外国に行き、生活費を賄うという、休暇を目的とした制度。それに『ふるさと』という冠をつけただけで、若者の労働力を地方で活用するという、地方の人口減少対策に転用できるのか?そこにいちばんの違和感がありますね。どんどん地方から若者が流出していく原因は地方に魅力的でやってみたい仕事がないからです。実際に地方に行ってみればわかりますが、本当に定着できる正規雇用は極端にいえば公務員くらい。そういった場所に若者が出かけていったとしても、農繁期の手伝いくらいしか仕事はないのではないでしょうか。総務省といえば、見返りの贈呈品競走になってしまっている『ふるさと納税』の担当省庁です。地方創生を旗印に『ふるさと』という冠をつければ、なんとなく予算を獲得できると踏んでいる。そんな思惑が見え隠れするのもイヤですね」

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