「組織委員会からのリクエストは、『包むもの』=『風呂敷』をというものでしたので、綿などいろいろな生地を提案させていただいたのですが、最終的に『シルクで!』と決めたのは、小池さんでした」
こう笑顔で振り返るのは、東京都新宿区の地場産業「東京染小紋」「江戸更紗」の名匠で、「富田染工芸」5代目社長の富田篤さん(64)。小池百合子都知事(64)が身につけて注目を浴びた、あの“百合ちゃんスカーフ”の製作を手がけた伝統工芸士である。
正式名称は「東京染小紋風呂敷クロス」で、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が1月11日より展開している東京2020公式オリジナル商品「ジャパンプレミアム」の1つ。富田さんに、このスカーフを持って都知事に初めて会いに行ったときのことを聞いた。
「日本の伝統工芸を応援してくださっている小池さんに会えるということで、楽しみにしていました。そして、小池さんがお話のなかで繰り返し『いい風呂敷ね〜』とおっしゃるので、私は『都知事、こちらに使用している生地は厳選されたシルクサテンで、ふつうは高級ドレスに使うもの、シワになりにくいものです。風呂敷としてだけでなく、スカーフとして巻くと、とてもクールなんですよ』と申し上げました。すると小池さんはパーッと明るい表情になり、『え〜っ、巻いて、巻いて!』と(笑)。小池さんはチャーミングな一面もある方なんですね」
風呂敷クロスは即日完売で、現在入荷待ち。都知事が公の場所でこのスカーフを披露するようになると、富田染工芸にも問い合わせが殺到。型染めを体験できる「東京染小紋こぎれ染め・体験コース」への応募が急増した。富田さんの作品も贈り物にと大好評だ。
「おかげで若い女性にも注目されるようになりました。小池さんの“目利き”ぶりには本当に驚かされます。風呂敷の生地を決める際に『やっぱりシルクでいきましょう!』と判断し、さらには風呂敷&ストールという“和洋折衷”の使い方を実践したそのセンス–。私たち伝統工芸士も、’20年オリパラを全力で盛り上げたいと思っています」