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日本の将来を左右する、重要な争点が目白押しだった今回の総選挙。与党の勝利でその公約が進められたら、私たちの暮らしはいったいどうなるのか、識者に聞いた。

 

「アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、報復でソウルは火の海に。日本の米軍基地も狙われるリスクが高まります。それに加え、難民化した2,000万人の北朝鮮国民を統治するにも、莫大な費用がかかる。核がテロリストの手に渡る危険もある。そんな大きな代償を払って、アメリカが戦争というオプションを選択するとは思えません」

 

一触即発のように見える北朝鮮情勢をそう冷静に分析するのは、元防衛官僚で、第1次安倍政権で官房副長官補を務めた柳澤協二さん。ただ、戦争を回避するためには、トランプ大統領のメンツを潰さないように、うまく彼に“振り上げた拳”を下ろさせる“演出”が必要だと言う。

 

「安倍さんも戦争は望んでいない。おそらく年内には、さらなる危機をあおるなど、韓国と日本が対話を懇願してトランプ大統領が『しょうがなく交渉のテーブルに着いた』と見えるような、なんらかの“演出”が行われるはず」(柳澤さん)

 

しかし、その“演出”を成功させるのは、簡単ではない。

 

「危険をあおって支持率を上げるのは政治の常とう手段で、トランプ大統領も安倍首相も、それをやってきた。しかし、国民のほうが、危険をうのみにして、より強い圧力を政治に求めるようになったら、“上げた拳”を下ろせなくなり、“演出”は失敗します。そうなれば、戦争に突入する可能性もないわけではありません」(柳澤さん)

 

「この国を守り抜く」と勇ましい公約をぶち上げた安倍首相。世論が“対話”を望まなければ、“演出”も失敗に終わりかねない。

 

■原発の核燃料再処理費用で電気代が高くなるという試算も

 

新内閣では、安定的に低コストで供給できる主な電源のひとつとして、“原子力発電”を位置づけている。しかし、この方針に異議を唱えるのは、長崎大学核兵器廃絶研究センター長の鈴木達治郎さんだ。

 

「経済省の試算によると、原発の発電コストは、10.1円/kWと、石炭火力などほかの発電コストと比べて最も安くなっています。しかし、この金額には、福島第一原発事故の対応費用が12兆円しか含まれていません。すでに昨年、事故対応費用は22兆円まで膨らむという試算が出ており、これに放射性物質の最終処分費用なども含めると、私の試算では少なくとも60兆円の事故処理費用がかかります。そうなると、原発の発電コストは11.7円/kWと大幅に増え、ほかのどの発電よりも高くなる」(鈴木さん)

 

これに加えて、原子力発電によって増え続ける使用済み核燃料(核のゴミ)を再処理する費用も莫大だという。

 

「来年の春には、青森県六ケ所村の再処理工場を本格稼働させるといわれていますが、建屋に雨水が流入するなどトラブルが相次いでいるので、おそらく無理でしょう。もう再処理はやめたほうがいい。安全性に対する不安はもちろん、再処理にかかる総費用が’30年までに18兆円かかると試算されています。再処理を続ければ、1kWあたり1.5円くらい電気代が高くなるという試算も」(鈴木さん)

 

コストに見合わない使用済み核燃料の再処理をあきらめ、自然エネルギーにシフトしている国も増えているという。いっぽうで、どんどん原発の再稼働を進める安倍政権。増え続ける核のゴミを、どう処理するかは、まだ決まっていない。

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