1300年以上昔から人の邪気を払い続けてきたという「四国の霊能者一族」の末裔、森保美さん(53)。地元の愛媛県松山市近辺では、スピリチュアルカウンセラー・シルヴァ真印(まいん)として、知る人ぞ知る存在だ。彼女のサロンは連日予約が殺到し、顧客は日本全国から、遠くはオーストラリアやヨーロッパなど海外からもやってくる。

 

「最初に自分がほかの子と違うとわかったんは幼稚園のころ。私に見える人や人影が、ほかの子には見えていない。見えてると思って話しても、誰にも通じなかった。うごめく影は夜現れる。人だったり、猫やキツネ、蛇といった動物の姿のものもあった。のしかかって、私を押さえつけるものもいて、苦しくて声もでない。すると、ウメヨばあちゃんは『怖いときは唱えなさい』って、呪文を教えてくれたんです」

 

保美さんの祖母・ウメヨさん(’67年没・享年69)も、曽祖母・クマさん(’62・享年94)も、同じ特殊能力を持ち「拝み屋」と呼ばれていた。一昨年に他界した父の保さん(享年77)も、同じ能力を持っていたが「拝むのが怖い」と力を使わなかったという。力は使わずとも幼い保美さんの恐怖を理解し能力を肯定してくれた父の存在の一方で、保美さんは、学校では友達と遊ばず、いつも一人遊びを楽しんだ。

 

「休み時間、クラスの皆が校庭で遊ぶのを空から眺めるのが好きでした。自分で”高歩き”って言ってたんですけど、肉体から意識を空のほうに飛ばして、上から見るんですよ。残された肉体は動かないから、他人からはボーッとしているように見えるんやろね」

 

そんな彼女を気味悪がる同級生は多かった。実は、夫の健次さん(53)は小中学校の同級生。「彼女はいつも一人。とげとげしくて近寄りがたくて、傲慢な印象。どっちかっていうとイヤなやつ。そのくせ、存在感があって目立つんだ」。健次さんの親友は、保美さんの第一印象を「目がたくさんある女の子」と評した。子ども時代の保美さんはいつも孤独で疲れきっていた。

 

「見たくないものが見えるって、すごく疲れるんです。たとえば、授業中、教師に意識を集中すると、教師の背後にスクリーンのようなものが浮かんで、いろんなものが見えてくる。夫婦げんかや飲んだくれる姿、果ては教師の夜の営みまで。大人の本音と建前がいっぺんに見えるから、生意気にもなりますよ」

 

小学生のころはすごく増長していたと語る保美さん。しかし、中学生になってからは自ら力を封印し、それまで距離を置いていた同級生と融合しようと努力した。保美さんは自分を押し殺し、高校を中退後、美容師になった。「二日酔いの人の髪や体を触れば、私も二日酔いになり、肩こりがひどい人を触れば、肩がこる。でも、触られた人は痛みが楽になるから、喜ばれてね」。顧客は増えたが、からだはいつも不調だった。

 

20歳で前夫と結婚し、22歳で双子の男の子を出産。美容師のキャリアを積み、32歳で独立。彼女の力の噂を聞きつけて、相談めあてにパーマやカットにくるお客が増えてくる。しかし、力を使うと、どうしても体調を崩してしまう。悩んだ保美さんに、父が「保美。強いばかりじゃダメなんだよ」と忠告してくれた。保美さんは「自分は、特別な存在って思い上がっていたんだと思う」と気がついた。

 

40歳のとき実家を改装。美容室を移転した。そこで占いやカウンセリングだけでも受けるようにした。相談料は3千円。サロン『シルヴァ真印』の始まりだ。「私はこれまで何度も、こんな能力はいらないと思った。でもね、これが私なんだって今は思う。自分自身を信じることはルーツを信じること。受け継いだこの力の正しい使い方を学んでいくことが、自分の本道だと思っています」。彼女の息子、そして孫にも、同じ能力が受け継がれているという――。

 

 

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