1月14日、NPO法人『OD-NET』が無償で卵子を提供してくれる女性を募ると発表した。無月経などの症状が出るターナー症候群や早発閉経など、“卵巣機能不全が原因で子どもができにくい”40歳未満の女性患者のために呼びかけたもので、日本で初めての試みとなる。これまで日本では、卵子提供の道は事実上閉ざされてきた。法整備もされていないだけでなく、産婦人科学会では夫婦間のみ体外受精を認め、第三者からの卵子提供は認めていなかった。例外的に一部病院で夫婦以外の体外受精も実施されていたが、その場合も卵子提供者を自ら見つけてくることが条件。多くの女性は海外に渡り、高いお金をかけ治療を受けるしかなかった。ターナー症候群は2千人に1人、早発閉経は100人に1人の割合で起きると言われている。つまり日本の現状が原因で、妊娠をあきらめざるを得なかった女性たちが約70万人もいるのだ。A子さん(39)も悩み続けた一人だ。彼女は32歳のときに薬剤師の夫と結婚。その直後から現在まで7年間不妊治療を続けてきた。だが治療を始めて間もなく、ターナー症候群であることの壁にぶち当たったという。「もう日本での妊娠は不可能だ」と思った彼女は、米国での卵子提供を受けることを決意。卵子提供にかかった治療費は、約300万円にのぼった。「渡航費や滞在費などを合わせると、合計で約400万円。今でもローンで支払っています。それまでは専業主婦でしたが、返済のために週4日パートに出ることにしました」と語るA子さん。渡米のハードルは思ったより高かったという。「日本でさえ不安なのに、海外での治療はさらに不安でした。通訳のスタッフはいますが診察中は同伴できないため言葉がまったくわからず、今自分に何が行われているかがわかりませんでした。現地で排卵日の調整なども行わねばならず、精神的負担と経済的負担が大きいんです」彼女は二度渡米したが、結局失敗に終わった。「ぜひ『OD-NET』に登録したいです」と語り、現在は登録の順番を待っている。そんな同団体の今回の発表は、大きな反響を呼んだ。「初めて自分の卵子がなくつらい思いをされている女性がいらっしゃることを知りました。ぜひお役に立ちたいです」「私も不妊治療の経験があり、そのつらさはわかる。少しでも協力できたら」などの声とともに、無償提供にもかかわらず、17日までに100人の女性が登録を申し出たという。また15日には厚生労働省が国内の実態調査に乗り出すことを発表した。さらに日本産婦人科学会も法整備を国に求める考えを提示。「法整備が条件」とした上で、今回の取り組みについて「認めないわけではない」という容認ともとれる見解を示した。希望の光が、ほんの少しずつ差し込み始めている――。