「『字は人を表す』といいますが、洋服によっても印象が変わるように、文字の本質を理解して、書き方を工夫すれば、自分のイメージを装うような文字を書くことも可能です」
そんな、自分をよりよく見せるための『魅せ字』について教えてくれたのは書道家の木下真理子先生。まずは文字の自然なカタチや、美しさを理解することが大切だという。
「新聞や雑誌などで、正方形に収まる均衡のとれた活字を目にすることが多く、文字本来の美しいカタチを勘違いしていることも。ひらがなは、もともと不均衡なもの。それを意識するだけで、通常のペン字とは一線を画した『魅せ字』に近づけることができます」
強弱やアクセントをつけるなど、創意工夫をプラスすれば、自分らしさも演出できる。そして、大きなポイントとなるのが、「文章の全体のイメージを持つこと」だという。一文字ずつキレイに書けても、長文になるほど、少しずつバランスがくずれてきてしまう……。なんてことにならないよう、全体的なまとまり感や、印象に気をつかうよう心がけて書くことが大事なのだとか。そこで、木下先生が考案した『魅せ字』奥義5カ条を伝授!これだけであなたも美文字が書けるはず。
【1・ペンの持ち方、机の高さ】
「ペンをついぎゅっと握りしめてしまいがちですが、適度な力でやわらかく持ち、いつでも強弱をつけられるようにしておきましょう。また、ひじの角度が自然な状態であることも大事。とくに縦書きの場合は、ひじを引いて書くことができるか確認を」また、筆圧の強さや、持ちやすい太さなど、自分に合ったペンは人によってさまざま。いろいろと試してみよう。
【2・漢字を書くときの意識】
「漢字を書くときには、『水平・直線』『一点一画』『トメ・ハネ・ハライ』を念頭において書くようにしましょう」ひらがなや、ほかの文字との自然なバランスによっては、1行の文章の中心が漢字の『へん』と『つくり』のあいだを通らなくてもいい場合も。
【3・ひらがなを書くときの意識】
「『曲線であること』『やわらか』『なめらか』『しなやか』であることを意識して書くようにしましょう。また、漢字に比べてひらがなは左右不均衡であり、縦長の字も多いことを知っておきましょう」縦長の『り』や『し』は、不均衡の代表。活字に見られる正方形の枠にとらわれず、自然な流れを意識して書いてみよう。
【4・文字のつながりや文字の大きさ】
「『点と線』『文字と文字のあいだ』において、つながりを持たせることで単調さを軽減して、やわらかさや流麗さを表すことができます。また、ひらがなは一律に文字の大きさをそろえようとせず、文字の大きさに多少の不ぞろいがあるほうが、自然な美しさを表現できます」
【5・中心線をイメージすること】
「曲がらないように、文字の中心を合わせながら文章を書いていくとキレイに見えます。さらに、一文字の中心線、『へん』と『つくり』のある文字の中心線、1行の文章の中心線をそれぞれ意識するといいですね。はじめのうちは、書く前に紙を縦半分に折って中心線をつくるのも手です」