今年4月、福島第一原発の敷地内に造られた地下貯水槽から、120トン以上の汚染水が漏れていたことが発覚。それから3カ月たった7月22日、東電は初めて、敷地内から高濃度の汚染水が海に漏れ出していることを認めた。地下水の水位と海水の間に水の行き来があるとの見解を示したのだ。

 

「今回の公表は『遅きに失した』という感じです。もう認めるしかなかったのでしょう。ただ東電は、汚染水漏れについて、もっと前からわかっていたのではないかと思います。現在、福島第一原発の海側に、地下から汚染水が海に流れ込まないよう、長さ780メートルにわたる『遮水壁』を建設中ですが、それを着工したときから、汚染水の海洋流出を認識していたのでは? と疑いたくもなります」

 

こう語るのは、以前から海への汚染水の流出を危惧していた、元大阪市立大学大学院教授で日本環境学会元会長の畑明郎氏。遮水壁は、汚染水が沖合に流出するのを防ぐためのもの。だが、その遮水壁が完成するのは’14年の7月と、かなり先のことになる。しかも完成したとしても、さらなる問題が起こるという指摘がある。

 

「海につながる地下の水脈を遮水壁で遮断すれば、今度は地下の汚染水は行き場を失い、どんどん敷地内にたまっていきます。そうなると、汲み上げ処理せざるをえなくなり、もっと多くの貯水タンクを造らなければなりません。やはり、敷地を囲うように陸側のも遮水壁を造るなど、敷地内に地下水が入ってこないようにする対策が急務でしょう」(畑氏)

 

さらに今回、東電が公表した汚染水漏れについて、ある“疑惑”が浮上している。それは、公表日についてだ。東電は、7月18日未明に海への汚染水漏れを把握していながら、公表したのは4日後の22日。その前日、7月21日が参議院議員選挙の投開票日だったことから「意図的に公表を回避したのではないか」という批判が巻き起こっているのだ。

 

「22日というタイミングで公表したというのは、何かしらの意図を感じますね。じつは選挙の前から、福島第一原発の地下水を観測する井戸から、数十万ベクレルのトリチウムやセシウム、ストロンチウムなどが検出されていました。この観測用の井戸は、海から6メートルほどの場所にあるので、この時点で海に流れ出ていることくらい、予想できるわけですよ」

 

と話すのが、今回、参院選で脱原発を訴え、無所属候補者として当選をはたした山本太郎氏。参院選はご存知のとおり、原発の再稼働を推進する自民党の圧勝に終わった。しかしもし、投票日の前に汚染水漏れが公表されていたら、少なからず選挙に影響が出ていたに違いない。

 

山本氏は「東電は汚染水漏れよりもっと報道されたくないことがあるため、情報を出すタイミングを操作したのではないか」とも指摘する。

 

「いま、福島第一原発の3号機から、放射線量の高い湯気が上がっているんです。たとえばですが、汚染水の情報を公表することによって、3号機の問題が大きく報道されないようになる、ということも考えられます。東電が出す情報は、このようにすべて操作されている、と僕は思っています」(山本氏)

 

原発の事故後、東電の情報公開が、いつも後手、後手になるのは、今回に始まったことではない。情報を小出しにしながら、対策を先送りにしていると感じるのは、山本氏だけではないはずだ。

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