最近では持ち味の“真面目さ”を生かして、バラエティでも活躍する上川隆也(48)。24歳で劇団に入った上川が俳優として世間に広く認知されたのは、主演を務めた’95年放送の山崎豊子原作『大地の子』。この作品は、自身にとって大きな転機だったという。

 

「それまで役者は“おもしろいからやっている”もので、生業にしようなんて自覚はなかったんです。そんななか『大地の子』の依頼をいただき、中国語のレッスンをしている間に撮影が始まりました。そこでいきなり仲代達矢さんをはじめ素晴らしい方々の芝居を目の当たりにして衝撃を受けました。僕が芝居を一生やりたいと思った初めての瞬間でした」

 

当時、ほぼ無名だった上川の大抜擢。そのプレッシャーにも、長期の過酷な中国ロケや中国語が半分以上のセリフなどにも負けず、難役を見事に演じきった。

 

「暑いときは40度、寒いときはマイナス20度のなかでの撮影も普通にあったので、今思えばなかなかの環境だったと感じますが、当時はこれが過酷と言えるだけの比較対象が僕にはなかったんです(笑)」

 

とにかく芝居をすることに精いっぱいで、その過酷さすら実感する余裕もなかったという上川。

 

「もし今同じことをと言われたら、環境はさておき中国語の膨大なセリフをこなす自信がないです。自分でもなんでできたのか不思議ですから(笑)。山崎豊子先生とは撮影前と撮影後に一度ずつお会いできたのですが、撮影後に会ったときには、ねぎらいの言葉をかけていただけました。とてもうれしかったです」

 

その後、上川は’06年にNHKの大河ドラマ『功名が辻』で主演を果たす。また、濃いキャラクターで思い浮かぶのが『遺留捜査』の糸村聡。’11年に始まり、今年4月に第3シリーズが放送された人気作品で、このたびドラマスペシャルが放送される(テレビ朝日系・11月10日21時~)。最後に俳優を続けているなかで、大切にしていることを尋ねると悩んだ末に……。

 

「原点という意味では『大地の子』で共演させていただいた、仲代さんと朱旭(チュウ・シュイ)さんの現場でのたたずまいかもしれません。終始穏やかで待ち時間はみんなに笑いを提供し、芝居に入ると重厚なお芝居をされる仲代さん。朱旭さんは一緒にいることですごく安心感があった。追いつけないその背中を、僕は今も追いかけているのかもしれません」

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