涙には3つの種類があります。基礎分泌の涙(眼球を乾燥から守る)、防御反射の涙(たまねぎを切ったときなど)、そして、情動の涙(感動したときなど)です。なかでも、感動の涙は脳の疲れを癒やす作用があるといいます。東邦大学医学部名誉教授で脳生理学者の有田秀穂先生に解説してもらいました。

 

「スポーツなどを見て感動すると涙する、これは人間だけに与えられた特性です。オリンピックなどを見ていて泣けるのは、自分が子どものころに努力したことなど、無意識下の経験が共感を呼ぶからです。

感動して泣くときは脳の『前頭前野』が活性化します。思考をつかさどる大脳皮質の中で、前頭前野はその30%を占める重要な部分で、『学習・仕事・共感』という大きな3つの働きがあり、この『共感』性が情動の涙に大きくかかわってきます。

感動して「共感」という興奮が起こり、副交感神経が非常に高まった状態に陥ると、

しばらくコントロールできないほど特別な状態を脳に作ります。激しく泣くことはいわば、脳の思考部分が一時的に停止したような状態なので、疲れた脳を休めることができるのです。

 

脳科学から見ても、情動の涙はストレス解消に大きな効果があります。人間の大脳は強く発達しているので、疲れがち。便利になった現代社会では、肉体的ストレスよりも精神的な脳ストレスが強くなっています。この脳の疲れを癒やすためには積極的に泣くことは、大きな意味があります」

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