「これは『Kawaii』のルーツがすべて詰まった映画です。元の作品は子供のころ(’79年公開)に見てずっと心に残っていました。監督のお話をいただいたとき、最初はプレッシャーを感じて迷いました。でも当時の脚本に、僕が10代のころ影響を受けた寺山修司さんが関わっていたことを知り、運命を感じたんです」

 

そう話すのは、原宿Kawaiiの火付け役・増田セバスチャン(44)。日本のカワイイ代表・キティちゃんの生みの親、サンリオが35年前に莫大な時間をかけて製作した人形アニメ『くるみ割り人形』を、増田が全く新しい作品にリ・クリエイトした。主人公は人形の国に迷い込む少女クララ(吹き替えは有村架純)、そして、テーマ曲を歌うのは、きゃりーぱみゅぱみゅだ。

 

膨大な絵コンテを増田自ら描き直し、35年前の作品フィルムを1枚1枚デジタル化。当時の人形を使って新たにアニメーション部分を追撮した。全編にわたり増田が粘土で作った花々やチョウなど、カラフルでカワイイ世界が3Dで広がる作品に生まれ変わった。

 

「僕のカラフルの発想は、自分が幼少期に見たものが全て。縁日の綿菓子や水風船、原っぱのタンポポ。子供のころは周りがすごくカラフルに見えていたはずなのに、大人になるにしたがい忘れてしまう。それが自分の生き方を窮屈にしているのではないか。子供のころの自由な発想や、羽ばたいていたころの感情を思い起こせばもっと豊かに生きられるのではないかと。豊かな人生を暮らすための存在の一つに色がある。それが僕のメッセージであり、テーマです」

 

確かに原宿発カワイイは世界で注目されている。

 

「戦争は色のない世界。対してカラフルな世界は希望に満ち溢れている。閉塞感のある時代だからこそカラフルが求められている。欧米は意外に保守的で早く大人になることを求められます。でも日本には少女文化のようにおおらかな文化がある。独特の繊細な感覚や自由なスピリッツが日本のポップカルチャーの魅力。ですから“東京に行けば自由に羽ばたける”と海外から日本にやってくる。原宿カルチャーは奇抜なだけではなく、時代背景と表裏一体となっているから若い世代をひきつける」

 

増田は今回の作品を、リアルタイムで旧作を見た世代もぜひ子供と一緒に見てほしいと言う。

 

「子供はポケモンが見たいと言うかもしれないけど(笑)、日本のKawaii文化やアートは、先人から脈々と流れて現在のアニメやポケモンにつながっている。それを伝えてほしいですね、アート教育として」

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