「国選の弁護士費用は一律でだいたい7万円。あとは事案によってだいたいの相場がありますが、依頼者の事情によって、個々に相談に応じています。事案の数は多いので、生活していくには十分ですが、お金以上に、自分が弁護して幸せになっていく人を見るのが、私にとっての幸福ですね」

 

そう語るのは、竪十萌子さん(33)。竪さんはママさん弁護士であり、労働問題をはじめ貧困問題やDV、離婚など女性問題に取り組む弱者の味方だ。「町弁」として地域に根を張り、損得勘定抜きの活動ぶりに、いつしか「埼玉のジャンヌ・ダルク」という通り名がついた。

 

「町弁」とは、主に地域住民からの依頼を受ける町の弁護士。26歳のとき、大宮駅から徒歩5分の雑居ビルの中にある埼玉中央法律事務所で弁護士生活をスタートさせた。新人弁護士として役所などの法律相談を皮切りに、気付けば、離婚やDVなど女性問題の相談が多く寄せられるようになっていた。

 

「再婚相手から子供への虐待があるケースも。女の子だと、性的虐待が多いです。性的虐待でのいちばんの悲劇は、母親に被害を訴えた子供を、母親が受け入れられず、子供を責め、見捨てるケースです」(竪さん・以下同)

 

また、事案を手がけていくなかで、裁判や調停後のフォローこそが大切という思いから生まれたのが、「はぐたまカフェ」だ。2カ月に一度、離婚問題やDVなどに悩む女性や元依頼人に加えて、看護師やカウンセラーなど専門家が集う。「はぐたまカフェ」は竪さんにとっても、弁護士として成長させてくれる学びの場となっている。

 

昨年12月17日のさいたま地裁。法廷のピンと張りつめた空気を切り裂くように、「原告が1時間働くごとに、被告は約600円の中間搾取をしていました。被告は損害賠償を負うべきであります」という竪さんの鋭い声が響きわたった。

 

この日は、5年以上の歳月を費やした労働裁判の最終弁論。労働者に支払われるべき賃金が、企業がつくった関連会社を通して搾取されていると訴えているケースだ。

 

原告側弁護士は竪さん1人だが、対する被告側には2人の弁護士が。1人は年輩のベテラン弁護士で、特有の圧迫感を感じるが、竪さんは一向にひるまない。黒いスーツに身を包んだ158センチのきゃしゃな体が、とても大きく見える。

 

公判後は、裁判所近くのビルの一室で報告会。竪さんが支援者とともに、重たいキャリーバッグを引きながら歩いて移動するその横を、被告側の弁護士が、入口に横付けしていた黒塗りハイヤーに乗り込み、裁判所を後にした。

 

「被告側弁護士は裁判所まで送り迎え付き。こっちは5年間で着手金が十数万円、あとは手弁当(笑)。企業相手だと裁判も厳しい闘いとなります。でも、不当な扱いを受けた彼を思うと、負けてられません。相手が大きければ大きいほど燃えます!」

 

ときには法廷で号泣してしまうこともあるという竪さん。依頼者に徹底的に寄り添って共感する熱い気持ちゆえに信頼され、自身の弁護活動への原動力にもなっている。そんな「埼玉のジャンヌ・ダルク」は、幸せの輪からこぼれた人たちとともに、損得度外視で闘い続ける。