「パロはグループホームのアイドル的存在。『ゴン』と名づけられ、皆さん、ペットのように思っているようですね」
こう話すのは、世田谷区にある認知症高齢者向けグループホーム「花物語せたがや南」の管理者を務める宮崎静香さん。同ホームは’14年4月のオープンと同時に、独立行政法人・産業技術総合研究所が開発したメンタルコミットロボット・パロを導入。スタッフと利用者とのコミュニケーションツールとして役立てているという。
パロのモデルは、北極海に生息するタテゴトアザラシの赤ちゃん。体長57cm、体重2.5kg、大きめのぬいぐるみのような感覚だ。一般向けには、36万円(税別)で販売されている。
「首をかしげてじっとこちらを見たり、手をパタパタさせたりと、まるで意志があるよう。皆さんつい『どうしたの?』と話しかけてしまうみたいです」
フワフワの毛並みをなでているだけでも、ペットと接しているときのような温かな気持ちが湧いてくるよう。それもそのはず、パロにはアニマルセラピーと同様のメリットがあり、実際に海外では認知症の改善効果があることも証明されている。その効果が認められ、セラピー用ロボットとして広く医療施設や介護福祉施設で導入されているという。
「入居したばかりのある方は最初、スタッフが呼びかけても応じず、会話ができませんでした。でも、パロと触れ合ううち、様子が変わってきたんです。『キュウキュウ』と鳴く声に『おぅおぅ、そうかそうか』とお返事をされて。その後、ホームにもだんだんととけ込んで、コミュニケーションがとれるようになったんです」
ホームでのパロは、ロボットというより「ゴンちゃん」という個性を持った存在として、皆に育てられているのだろう。宮崎さんは、これからの介護現場におけるロボットの存在に期待をかける。
「これから少子高齢化社会で、介護職員が不足していくとも予想されています。その中で、ロボットも重要な役割を担っていくのではないかと思います。実際にパロは、介護現場のスタッフの負担減に一役買ってくれています。それに、なんといってもかわいらしい!私たちスタッフ自身も、ゴンちゃんに癒やされているんです」