「しつけ不要」「見返りを求めてOK」という“脱・常識”の子育てを提唱する、男装をやめた東大教授の安冨歩さん(51)。中国は儒教の教えを基に、自らの実体験をふまえて語られる方法論は、決して机上の空論ではない。安冨教授の子育て論、その3。

 

――あらためて「正しい子育て」とはどういうものか、具体的に教えてもらえますか?

 

「今から申し上げることは、私の反省に基づいた皆様へのお願いにすぎないのですが……、一言で言えば、とにかく子どものやりたいようにやらせてあげることです。私の連れ合い(深尾葉子大阪大学准教授)がまさにそれを実践していますが、“親”というよりもまるで“召使い”。たとえば、真夜中に『トランプをしたい』と言われればできる限り応じようとしますし、家の中で暴れ回ってもほとんど怒りません。潔いほど徹底的に子どもを優先させる毎日を過ごしていますよ。彼女は小さいころから、家にいる猫の面倒をずっとみてきたのだそうです。猫って飼い主の様子に敏感に反応しながら自分流に生きている。そういう意味では、飼い主も猫の様子を感じ取りながらともに生きていくのがルールになるので、あえて型にはめようとしたり、叱りつけたりしないという方法が身についたそうなんです。その猫との付き合い方に学んで、それが自然に子育てに反映されたような方法で、うちでは“猫メソッド”と呼んでいます(笑)」

 

――“猫メソッド”ではどんなときにしつけをするんですか?

 

「これは声を大にして言いたいのですが、子育てにしつけも教育も一切いらないんですよ!ただただ子どものやりたいことを見守り、応援すればいい。それが愛情を持って育てるということです。もちろん好き勝手されたら腹が立つこともあるでしょう。とはいえ、部屋の壁に落書きをするとか家の中をぐちゃぐちゃにするとか百貨店やレストランや電車の中でのたうち回る、とかその程度ですよね。そうしたことをできずに育ち、大人になってから幼児期の抑圧が犯罪という形で噴出することを考えたらかわいいものじゃありませんか?外で誰かに迷惑をかけたときは親が謝る。自分のしたことで親が頭を下げる姿を見た子どもはそれをしなくなるはず」

 

――実際“猫メソッド”で育ったお子さんはどのようになりましたか?

 

「連れ合いの息子は、小学3年生のころにネットゲームにハマり1日中ゲームをしていたときもあります。でもある日、『飽きた』と言ってやめ、それからゲームに耽溺しすぎなくなりました。小学校高学年くらいから落ちつき始め、高校生になると誰も言っていないのに、自分でお弁当を作って学校に行くばかりか、時には妹のためにお弁当を作るようになりました。人からの指図では動きませんが、自分のやりたいことはなんでもする自立した人間に育っているように私には見えます」