「現在、空き家の数は全国で800万戸超。総住宅数の14%を超えているものと推定されます。高度成長期に購入した家は、団塊世代の人たちが減少するに従い、さらに空き家となっていきます。今後はとくに、郊外のベッドタウンで増えてくるでしょう」
こう話すのは、不動産コンサルタントの長嶋修さん。住宅熱が盛り上がっている一方、深刻な問題となっているのが「空き家」の増加だ。日本人にとって、住宅は資産だった。ところが今後は、そんな考えは捨てなければならないかもしれない。
「’14年8月に都市再生特別措置法が改正され、今後は政府が線引きするその内側に暮らすのなら、税制を優遇したり、住宅の容積率を上げたりします、という措置が取られます。『コンパクトシティ政策』と呼ばれるものの一環です。しかし線の外側の家については、インフラについても整備しないということになり、資産価値が落ちていくことになります」
政府の線引きは鉄道駅、あるいは鉄道が通っていないような場所では「道の駅」を拠点にしていこうと考えられているという。
「たとえばそこを拠点にして、町の特産品を売る、高齢者だけでなく若者向けの住宅も整備する、病院や役所といった公共の施設をつくるなど、活気を集中させようという試みです。今のところ、全国で35の道の駅が実施予定です」
今後は、地方でも生活のしやすい地域が生まれる一方、住めなくなる土地もでてくるということのようだ。
「将来的にどこに人が集まって、どこがそうでなくなるか、推定することが大切です」
相続した田舎の親の家などを、空き家のまま放置している人も多い。更地にせず家が残っていたほうが、固定資産税が優遇されるからだ。
「ただ、今後はこの法律も改正される向きがあります。さらに、放置されている空き家を自治体が強制的に解体し、その費用を所有者に請求できるという『空き家条例』が各地で施行されつつあります。これが本格的に導入されることになると、大変です。感情面を度外視したなら、住めない家は1日でも早く売却したほうがいいでしょう」
どんなに思い入れのある実家でも、住む人がいなければ「負の遺産」になると心得よう。