うつ病などの精神疾患で、’14年度に労働災害(以下、労災)の申請件数は1千456件。うち、認定されたのは497件で、どちらも過去最多だと、厚生労働省が発表した。いっぽう、脳梗塞や心筋梗塞など脳・心臓疾患での労災申請は763件で、うち認定は277件と、こちらは両方とも前年より減少。比較すると、精神疾患の多さが顕著だ。
「精神疾患で病院にかかっている患者数は、約320万人というデータもあります(’11年・厚生労働省)。心の病への対策が急がれるなか、今年12月より、職場でのストレスチェックが始まります。ストレスチェックとは、仕事の量ややりがい、職場の人間関係、体調などを質問し、ストレスの度合いを測るものです。従業員50人以上の企業は、年1回の実施が義務付けられ、契約社員やパートでも、労働時間などの条件を満たせば対象になります」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ストレスチェックは、これまで受けてきた健康診断の精神疾患版のようなもの。だが、健康診断とストレスチェックには大きな違いがある。健康診断の結果は本人と企業に通知されるが、ストレスチェックの結果は本人以外には知らされないのだ。
「ストレス度が高いとの診断結果を本人から申し出れば、企業は医師の面接を受けさせねばなりません。ですが、そんな申告をすれば、出世に響く、リストラされるかもと不安になる方が多いのではないでしょうか。むしろ診断結果を隠そうとして、ストレスが増えるのではと危惧しています」
ストレスのおもな原因は、長時間労働だといわれている。先の労災データでも、精神疾患で労災認定された人の約4割が、1カ月80時間以上の残業を行っていた。
「ストレスを減らす早道は、労働時間を規制することだと思いますが、昨年11月より施行された過労死等防止対策推進法にも、長時間労働の制限はありません。これでは過労死に歯止めがかかるわけもなく、労働者保護とは名ばかりだと言わざるをえません」
精神疾患は人ごとではない。もし今、あなたや家族が精神疾患に陥ったら、生活はどうなるのだろう……。そこで、荻原さんが心の病に陥ったときに受けられる経済的補助を解説してくれた。
「まず、精神疾患での通院治療費は、自立支援医療費の申請で自己負担が軽くなります。所得によりますが、一般的な所得の方は1割負担です。医師の診断書や所得を証明する書類などを持って、自治体の窓口に申請してください。1年ごとの更新が必要ですが、疾患が重度や長期にわたる場合は、さらに軽減されます」
また、会社員の人なら、精神疾患が理由で会社を休んでも、傷病手当金を受け取れる。病気などで働けず、会社から給料が出ない人は、最長1年半、給料の約3分の2が、傷病手当金として健康保険組合から支給される。
「夫が精神疾患になり、代わって妻が働くなら、妻を世帯主にして、夫の分の配偶者控除を受けることができます。会社員の方は勤め先に、自営業の方は確定申告の際などにご相談を。さらに、精神疾患の治療は長期化しがちです。傷病手当金の支給期間が終わっても、治癒しないときなどは障害年金の申請ができます。主治医や病院のソーシャルワーカーに相談するといいでしょう」