第二次世界大戦の終結から70年という、大きな節目を迎えた’15年。そこで、本誌は戦後70年に読みたい作品を、著名人に薦めていただきました。

 

「(この絵本は)幼稚園の園長先生が個人的にプレゼントしてくださって。今も手元にあり、大切にしています。優しい女性の先生でした。幼稚園児のころから本が好きな子供で、そんなこともあって、くださったのかなと思っています」

 

劇作家・平田オリザさん(52)が選んだのは、’54年に発表された絵本『動物会議』(エーリヒ・ケストナー著)。平田さんが最初にこの本を手に取ったのは、第二次世界大戦から20年が過ぎたころ。ベトナム戦争が起き、反戦運動に参加するような保護者が多い幼稚園時代だったという。

 

「私の両親も『戦中派』といわれる世代でした。あんな戦争は二度と嫌だ、絶対に反対というのが、社会全体の風潮としてありましたね」

 

物語は、戦争が終わって数年後が舞台。世界平和のために国際会議が開かれるものの、成果の出ない人間の会議に業を煮やした動物たちが“動物会議”を開く。

 

「動物たちは国境をなくせと要求するのですが、人間は相手にしません。そこで、会議の文書を粉々にしたり、制服をシミムシに食べさせてしまったりします。それでも事は一向に進まない。とうとう動物たちは、人間の子供を隠してしまいます。そこで初めて、大人たちは交渉のテーブルについて、国境をなくす決議をします。失わないとわからない大切なものに、気づかされるんです」

 

大人になってからも、機会があるごとにこの本を読み返していると平田さんは語る。

 

「この本は幼稚園児が読むには長いお話ですし、難しい内容ではありますが、挿絵も含めて、当時からとても気に入っていました。私がものを考える原点にもなっています。いちばん大切なことは『平和』なんだと」

 

その思いは、平田さんの作る演劇にも影響している。

 

「戦争の直接体験をした人が少なくなってきています。戦争という事実をどう伝えていくか、私たち芸術家の責任は大きいと思います。今後も戯曲・舞台を通じ、わかりやすく伝えていきたいですね」

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