「来年1月から企業による社員と家族の番号収集が始まり、コンピュータによる国民一人ひとりの収入把握がスタート。それを不安に感じる人からの相談件数が非常に増えています」と話すのは『共通番号いらないネット』代表世話人で20年以上、国民共通番号の問題点を調査・研究してきた白石孝さん。
10月20日ごろから、各家庭へ通知カードの発送が始まったマイナンバー。情報漏えいやなりすまし詐欺被害への不安がクローズアップされがちだが、ちょっとした納税の見落としがコンピュータで厳密にチェックされ、思わぬ追徴金を支払うリスクも激増する。マイナンバー制度にくわしい税理士の辻村祥造さんに聞いた。
「これまで所得税に関しては、税を納める人が自分の所得と税額を自ら申告(自主申告)納税するシステムでした。このため、申告されない収入に関して、税務署がすべてをフォローできているわけではない。ここにメスが入るわけです。たとえば扶養控除対象外なのに控除を受けていたケースです」
マイナンバーの導入で、収入が把握され、今まで通っていたことが通らなくなることもあるという。では、’16年1月の運用を前に私たちができる手立てはどんなものか?白石さんと辻村さんが損をしない心得5を教えてくれた。
すべての収入が丸裸になる覚悟をせよ
「すでに番号制度が施行されているオーストラリアに研修に行ったのですが、税務署員が暇なほど、すべてコンピュータが不備をチェックして知らせてくれる。日本も数年内に庶民の収入はもれなく把握されるはず。逃れることは難しい」(辻村さん)
家族の間で、現在の収入について正直に話し合う
「夫に隠しておきたい収入先もあるでしょう。しかし’17年以降、税金の捕捉から夫にバレる可能性が高い。子どものアルバイトも同じです。発覚したときの追徴加算額は想像以上に大きい。そのリスクを考えたら、今年中に一度、心を割って家族会議をすることを勧めます」(白石さん)
(3)妻が働くなら103万円に縛られず、より高所得を目指す
現在は夫の手前、控除の限度額である103万円以内に収入を抑えようとする妻も多い。しかし内緒の収入もすべて捕捉され、限度額を超えてしまうなら、堂々と働き、控除対象になっているより収入面で有利になるくらいの収入を目指すのもひとつの方法だ。
勤め先の副業規定をあらためてよく確認する
「最近は企業によっては少しくらいの副業は大目に見るという企業も現れています。自分の会社の規定をよく確認して、バレたら解雇など重い処置ということなら、とりあえず副業は自粛するしかありません」(白石さん)
ネット情報に惑わされない
現在、インターネット上にはマイナンバー運用後でもこうすれば副業OKといった書き込みが多く見られる。
「正直なところ、運用情報の最先端をつかんでいる私の会でも税務署のコンピュータによる所得の捕捉がいつ完了するのかはわかっていません。ネット上の不確定情報は信じてはいけない」(白石さん)
対応を間違えると思わぬ出費をしなければならなくなるので、注意しよう!