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戦後の学制改革で各県に1校ずつ設置されたことから「駅弁大学」などと揶揄されたのも今は昔−−。ここ数年、地方国立大学がじわじわと人気を集めているという。その理由について、駿台研究所進学情報センターの石原賢一センター長はこう解説する。

 

「10年くらい前から地元志向が強まってきているんですね。少子化の影響からか、子どもを手元に置いておきたがる親御さんが増えています。子どもたちも、都会で一人暮らしをすれば生活水準が下がることを知っているので、無理に親元を離れようとしません」

 

たしかに、日本中どこにでもスターバックスがあるこの時代、もはや都会への憧れは薄いのかもしれない。しかも、相対的に受験生の数が少ない地方は、東京に比べて倍率も低く、まさに「人気があるのに入りやすい」(前出・石原さん)のが現在の地方国立大学だと言えそうだ。

 

地方の国立大学が人気だということがわかったところで、次はどの大学の、どこの学部が、どのようにいいのかを具体的に見ていこう。食文化や方言などが各都道府県ごとに大きく異なるように、じつは地方国立大学にも土地に根付いた豊かな個性がある。とりわけわかりやすいのが理工系の学部だ。

 

古くから養蚕が盛んな長野県の信州大学では、明治以来の製糸技術から発展したファイバー工学が高い評価を受けている。また、旧鉱山学部の伝統を引き継ぐ秋田大学の国際資源学部がシェールガスやレアメタルの研究で実績を挙げているのも、地下資源が豊富だった秋田という土地柄と密接に関連している。さらには、砂丘を利用した乾燥地研究が盛んな鳥取大学農学部の乾燥地研究センターのような施設もある。

 

このように、“地の利”を生かしたハイレベルな研究に取り組んでいるのも、地方大学ならではの大きな特徴だと言える。灯台下暗しとはよく言ったもので、じつは私たちの目には当たり前になっている景色のなかにこそ、「いい大学選び」のヒントがあるのだ。

 

続いては、不況が長引くなか、大学進学とは切っても切れない「就職」という観点からおススメの地方国立大学を探してみよう。

 

「日本では、研究者の世界でもやはり東大や京大の人が多く、僕の入る場所はなかった。そのため僕はアメリカに行くしかなかった。結果的にはそれがよかったんですけど」

 

iPS細胞の研究によりノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授(神戸大学出身)があるラジオ番組でこう語っていた。さすがに近年ではこうした出身大学による身内意識はだいぶ低くなってきたが、地方によってはこの学閥の力が就職に有利に働くケースもまだまだ多い。

 

たとえば香川大学には、「又信会」という同窓会組織があり、政財界に多くのOBがいる。この会は香川大学のなかでも、高松高等商業学校の流れをくむ経済学部と法学部だけの同窓会で、学生たちの就職支援にも積極的だ。同大学のホームページに「金融業、公務を中心に高い就職率を誇ります」とあるのにはこうした背景もあるのだ。

 

もちろん高い就職率を支えるのはOBとのコネクションだけではない。福井大学は2015年度の実就職率(大学院進学者を除いた就職率)で国立大学ナンバーワンに輝いた(「大学通信」調べ)。ちなみにその前年までは私立大学も含めた全大学で4年連続ナンバーワンを記録していたというから驚きだ。同大学には就職に強い医学部と工学部、それと教育系の学部しかない(※今年4月に国際地域学部が新設)ことが高い就職率の大きな理由と見られるが、同大学は「就職に力を入れている大学」ランキング(同調べ)でも上位に入っている。

 

子どもの興味や適性、目標に応じた“モノサシ”が大学選びのポイントとなる、これからの時代。地方国立大学には意外な実力が秘められている。