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《あたりまえなんて 一つもない きょうもみんなの おかげさまさ ときにはケンカも するけれど やっぱり楽しい 岡本家》

 

毎夜8時すぎになると鹿児島市内の閑静な住宅街に響く『岡本家のうた』。家族全員がリビングに集まって始まる「夜の会」では、「日直」の司会のもと、各自が「今日のハッピー&サンクス」を発表し、最後にこの歌を全員で斉唱する。それが岡本家のルール。

 

「みんな、立ってくださ〜い」と安代ママ(39)がハイテンションに号令をかけると、パパの喜久さん(43)も、長女・果音さん(14)を筆頭に、長男・大生くん(12)、次女・実玲さん(10)、次男・成矢くん(8)、三男・幸城くん(6)の5人の子どもも、一斉に立ち上がる。

 

「1、2、1、2、3、Go!」の安代さんのリードで、家族みんなが楽しげに揺れ、両足でリズムを刻み、手拍子をとり、大きな声で歌いだす。歌詞1行の後半部分を安代さんが繰り返すコール&レスポンスは、さながら教会のゴスペルのよう。歌の後半はラップ調へと変わり、シメは「オイッ!」のジャ〜ンプッ!

 

こうして岡本家の1日が終わる。そして目が覚めれば、「朝の会」からまた1日が始まるのだ。

 

両親は、共にアナウンサー。善久さんは鹿児島読売テレビ(KYT)の局アナで、スポーツ中継を中心に活躍する「日本一の子だくさんアナウンサー」。安代さんはフリーとして情報番組のロケをこなし、担当する料理コーナーは今年で15年目になる。

 

昨年夏、そのユニークな子育てルールや、“ママウンサー”としての奮闘、にぎやかな7人家族の暮らしぶりが、人気番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)で紹介された。

 

岡本家は瞬く間に人気ファミリーとなり、シリーズ化された放送はすでに6回。’05年から始めたブログは子育てブログ部門1位を獲得したことも。6月7日には安代さん初めての著書『「大変だ」と言わずに笑おう! 岡本家、家族の約束。』(双葉社)も発売予定と、いまやお茶の間大注目の子だくさん一家なのだ。

 

「私、ネットでは『熱すぎる』とか『修造母ちゃん』なんて言われているみたい(笑)」(安代さん・以下同)

 

実は、岡本家の約束はかなりハード。リビングの壁には、毎日行われる「朝の会」「夜の会」の進行表と「日直当番」、家事分担表などが貼り出され、両親を「父上」「母上」と呼び、両親との会話は敬語。家にいても学校のようで堅苦しくも思えるが、子どもたちの誰もが嫌がるどころか率先し、鉄のルールを楽しんでいる。

 

たとえば、子どもたちの1日のスケージュール。分刻みに記された時間割は、長女・果音さんが作った。「岡本家のうたを作りましょう」と、提案したのは、長男・大生くんだった。両親を「父上」「母上」と呼ぶのも、一家そろって大ファンという大河ドラマの影響で、子どもたち発信だ。

 

そんな、一家が斉唱する『岡本家のうた』のメロディは、ミュージシャンを目指していた安代さんの弟・光正さんの曲が原型。

 

10年前のこと。突然、光正さんから「ねえちゃん、もしもし」と電話が入った。「ごめん、折り返すね!」と応えた安代さんだったが、時間に追われ、かけ直すのを忘れてしまう。

 

「その2週間後、光正が突然、倒れたという知らせを受けて」

 

風邪をこじらせ、肺炎を発症。光正さんは29歳の若さで急逝してしまう。安代さんはひどい後悔に苛まれた。

 

「あのとき光正は何を私に話したかったんだろう」

 

特別に仲のよい姉弟だった。夢を語り合う仲だった。そんな弟の突然の死−−。

 

「毎日、元気に過ごしていることは、当たり前じゃない。すごいこと。奇跡なんだと、弟が教えてくれました」

 

『岡本家のうた』の冒頭の歌詞《あたりまえなんて 一つもない》には、そんな意味がこめられている。

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