「朝の6時半ころ、海岸近くを散歩していたら、べた凪の海面に顔をだしているのを見つけました。鼻やヒゲがはっきり見えたけど、最初はラッコか?オットセイか?と。そこで知り合いの漁師さんに知らせたら、『あれはゴマフアザラシだ!』となってね」
そう教えてくれたのは、第一発見者の会社役員、石上昭夫さん(60)。宮崎県の最南端、都井岬近くにある串間市諏訪浜の沖で6月5日、ゴマフアザラシの子どもが発見され、人気者となっている。
見つかった諏訪浜にちなみ、地元の人たちが付けた愛称は「すわちゃん」。すでに1カ月半以上滞在していることから、“移住”したと見られるということで、串間市は特別住民票の交付を決定!7月15日には浜の前の立宇津緑地公園で交付式も行われた。
あいにく式の間に、すわちゃんが顔を出すことはなかったが、最後には保育園児たちが「食べてねー!」の大きな声とともに、冷たい氷をプレゼント。そして1時間ほどたったころ……。
「あっ、出た出た!」
双眼鏡で海を見ていた漁師が叫び、本誌記者も慌ててカメラを向ける。すると、波打ち際から30メートルほど離れた沖で波に揺られながら、顔だけを出してプカプカする、すわちゃんが!見物客から「すわちゃーん!」の掛け声が飛ぶ。この日、ちょうど駆けつけていた「いおワールドかごしま水族館」の海獣展示係・係長の吉田明彦さん(50)によると−−。
「もともと北海道など寒い地域に生息するゴマフアザラシを、こうした南の海で見かけることは非常に珍しいですね。どういった経緯でここまで来たのかはわかりませんが、方向を探知する能力が弱くなったり、どこかケガをして遊泳能力が衰えたりして、たどり着いたのかもしれません」
今のところ、すわちゃんが浜や消波ブロックなどに上陸した姿は目撃されておらず、体がどうなっているのかは確認できていない。
第一発見者の石上さんは「観光客を呼び、地域の活性化につながれば」と期待する。すわちゃん(の代理の石上さん)に特別住民票を手渡した串間市の副市長、佐藤強一さん(62)も、こう呼びかけた。
「すわちゃん!都井沖の魚は、うめかあ(おいしい)でしょう?ずーつ、おっくりゃいね〜(ずーっと、いてくださいね〜)!」