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(オスプレイへの不安を語る安次嶺雪音さん)

「夜9時くらいに寝ようと思っていると、オスプレイが訓練を始めます。11時くらいまで飛んでいるから、布団に入っても眠れないのがいや」

 

そう話すのは、沖縄県国頭郡東村に住む小学生の子供たち。東村は、沖縄本島の北部に位置する人口わずか約1600人の小さな村だ。希少な動植物が生息する”やんばるの森”に囲まれた東村の集落は、美しく、静かだった。

 

今、この村は、すさまじいオスプレイの騒音にさらされている。政府が地元の反対を無視し、東村で米海兵隊のヘリパッド(オスプレイの着陸帯)で離発着訓練を行い、さらに、ヘリパッドの新設もしようとしているからだ。

オスプレイとは、米海兵隊が’12年から普天間基地に配備している新型輸送機のこと。飛行機のように高速で、かつヘリコプターのように水平に離着陸ができ、物資などの大量輸送が可能だという。

 

しかし、欠点も多い。離発着のときには、巨大な風圧で砂塵を巻き上げ、周囲の木々をなぎ倒し、環境を破壊する。墜落事故が多く、飛ぶときに発する低周波による健康被害が指摘されている。

オスプレイの爆音や低周波に驚いてパニックを起こしたのか、やんばるの森にしか生息しない、国の天然記念物であるノグチゲラという鳥が相次いで窓ガラスに激突して死んでいるのが見つかっている。

 

さらに夏前から増加している海兵隊によるオスプレイの夜間訓練による騒音が、村民の日常を脅かしていた。

 

「オスプレイの夜間演習が多くなったのは、オスプレイが飛んでいる間は相手の声が聞こえませんから、3分くらい会話を中断して、過ぎるのを待つんです」

 

そう話すのは、高江に住む安次嶺雪音さん(45)。高江にある安次嶺さんの自宅は、新設されたヘリパットに近く、これまでもオスプレイが飛行訓練を繰り返すたび爆音に悩まされてきた。高3、高1、中1、小5、小3、6歳の計6人の子供がいるが、「夜眠れない」「音がうるさい」と不安を訴えた。小学生と中学生の子供らは、学校に通うのもつらくなるほど調子を崩したため、現在は東村に隣接する国頭村に避難中だ。

 

騒音調査を行っている渡嘉敷健琉球大学工学部准教授が、高江のヘリパッド周辺で測定したデータによると、今年6月20日の21時40分~22時35分までの間に、90デジベルを越える騒音が15回も記録されていた。さらに、22時過ぎには最大で99デジベルを越える騒音が……。

 

「100デジベルは、電車の高架下なみです。WHO(世界保健機関)は、夜間なら室内で35デジベル程度が望ましいとしていますが、それと比べたら桁外れに大きい。高江の住民は、電車の高架下で眠らされているようなもの」

 

しかし、この高江ヘリパッドについて「そもそも、矛盾してるんです」と語るのは高江の住宅団地近くに住む阿木さん。

 

「北部訓練場の大部分を返還するという約束でヘリパッドを作ったのに、日本政府は米軍から訓練場を返還されないうちに早々とヘリパッドを米軍に引き渡しました。負担軽減どころか私たちの負担は増しています」という。

 

「本当なら、改めて地元に合意を取り付けないといけないのに、政府は沖縄県にも東村にも、オスプレイパッドになるとはいっさい明らかにせずに07年に工事を始めてしまった。一方でオスプレイが12年に普天間に配備される直前まで、『オスプレイは来ない、知らない』と政府はごまかし続けました」

 

驚くべきは、こうした米軍再編にかかる経費も、すべて“日本持ち”だという点だ。

米軍再編経費を含む経費は、通称”思いやり予算”(特別協定予算)と呼ばれている。

在日米軍の維持に日本の税金から約5千200億円が注ぎ込まれている。

 

防衛省は、2020年までにオスプレイ10機を東京都福生市の横田基地に配備する予定だ。そうなれば北関東から静岡方面まで訓練飛行区域に入る。

さらに佐賀空港でも17機を配備する予定で、防衛省は佐賀県と調整しているが、地元からは反発が起こっている。前出の安次嶺さんは言う。

 

「いま、高江で起こっていることを、決して他人事だと思わないで。これは日本全国どこでも起こり得ることです」

 

命が脅かされ続けている高江の動向から目が離せない。

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