「一般的に、火葬で排出される二酸化炭素は1人あたり約160~250キログラムといわれています。ガソリンの排出量に換算すると、日本を縦断できてしまうほど。現在世界では、環境に配慮したさまざまな遺体処理方法、葬送の方法が提案・実施されています」(葬儀関係者)
宗教上の理由で禁じられている場合を除き、日本国内ではすべての遺体は火葬されている。仏教とともに伝来されたといわれている火葬は、土葬に比べて衛生的であること、土葬を禁じている墓地が日本に多いことから、日本人が思い浮かべる葬送方法としては一般的だろう。しかし近年、諸外国で火葬における排ガス量が問題視されている、と前出の葬儀関係者は語る。
「日本でも、お棺の素材を段ボールにするなどして、火葬の際に排出される二酸化炭素を抑える試みがなされています。段ボールでも、見た目は普通のお棺と区別がつかないほど、しっかりとしたつくりになっています」
本誌は、世界で行われている葬送方法を調査。調べてみると、海外では驚くべき“エコ”な葬送方法が実施されていた--。
「アメリカでは、3時間ほどで薬品を使って遺体を溶かしてしまう『リソメーション』という方法が提案されました。火葬と違って二酸化炭素を発生させないので、有害物質を抑えられる画期的な提案であるとされ、すでにアメリカで処置を受けている人もいるといわれています」(前出・葬儀関係者)
リソメーションとは、『人体の生まれ変わり』という意味を持つ「リソーマ」というギリシャ語からきている造語。薬品をかけられた遺体は、なんと骨と、茶色がかった液体に変わってしまうという!この葬送方法に使用する機械を創設したのは、スコットランドに本社を置くリソメーション有限会社。創設者である化学者のサンディー・サリバン氏は自身のホームページでこう述べている。
「135年以上前、火葬を葬送方法として定着化させるべきと提唱されたときも、人々に完全に受け入れられるまでに相当な説得を要しました。リソメーションは、革新的ではありますが、使用するエネルギーを大幅に抑え、温室効果ガスもカットしています。環境への配慮が叫ばれているいま、もう一度葬送方法を変えるべき時代に突入しているのです」
しかし、薬品で溶かすという方法には抵抗を感じる国民も少なくはないようで、アメリカで実施が許可されているのはフロリダなどの8つの州にとどまっている。費用は現地でおよそ650ドル(約7万円)と、日本での火葬よりやや高めだ。
そのほか、スウェーデンのプロメッサ・オーガニック社が開発したのが、「フリーズドライ葬送」。これは、液体窒素で遺体を冷却し、粉末状に砕いて堆肥にしてしまうというもの。粉は25~30キログラムになり、これを、でんぷんで作った別の棺に入れて地中約50センチメートルに埋める。棺も含めて1年以内で完全に土に返り、すでに韓国でも導入される方針だという。粉末となった遺体は、木の根元に埋めたり、埋葬した後で、花を植えたりする人もいるとか。費用はおよそ290ユーロ(約3万3,000円)。
イタリアにあるカプスラ・ムンディ社が提案したのは、遺体をカプセルに入れ木の下に埋め、樹木の養分にする葬送方法。名付けて、「追憶の森」プロジェクトというもの。亡くなった人のうえに「記念樹」として樹木を植え、常に手入れし続けることで、個人をしのぶというもの。実現化はいまだなされていないが、新たな埋葬方法として注目されている。
さらに昨年、米スタンフォード大学の研究者が、埋葬後に発芽し、遺体がキノコの養分になるという「キノコの死に装束」を開発。それを着せて遺体を土に埋めるという、いわば“自然の摂理”にのっとった葬送方法だ。
「この装束を最初に使用したのは、認知症と神経変性疾患を併発した63歳の患者です。死が迫っていることを医師に告げられたのちこの葬送方法を知り、自らこの研究者に連絡をとったそうです」(現地ジャーナル)
時代が進むにつれて、葬送方法もどんどん開発されていく。10年後には、日本でもっと驚くような“エコ葬”が生まれているかも--。