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2017年も終わりに近づいている。今年亡くなった方々の追悼特集がメディアで組まれるこの時期、今一度“死”について考えてみたい。

 

例えば、死ぬときに人はどうなるだろうか?

 

■死ぬときに人はこうなる――3つのタイプ

 

「死に至るまでの経過は人それぞれですが……」

 

そう前置きして答えてくれたのは、緩和医療医の大津秀一先生(東邦大学医療センター大森病院 緩和ケアセンター長)だ。

 

大津先生は、ホスピスで主に高度進行期・終末期がん患者の心身の苦痛を和らげる“緩和医療”を行っている現役医師。これまで2,000人以上の患者を看取ってきた経験から著書も多く出版しており、ベストセラー『死ぬときに後悔すること25』や、同書の続編にあたる近著『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社知恵の森文庫)などで知られている。

 

「海外のある専門家は、死に至るまでの身体の変化の過程を、3つに分類しました。1つ目は、最後の2か月くらいで急速に機能が低下するタイプ。代表例はがんです。2つ目は、悪くなったり、戻ったりをくり返しながら徐々に機能が低下し、最後は比較的急な経過をたどるタイプ。代表例は心疾患や肺疾患の末期です。3つ目は、機能が低下した状態が長く続き、ゆっくりと衰えていくタイプ。代表例は認知症や老衰ですね」(大津先生/以下同)

 

■“ピンピンコロリ”は多くない

 

いわゆるPPK(ピンピンコロリ)は、どのくらいあるのだろうか?

 

「そのような最期を迎えられる方は多くはありません。また上記した3つのタイプも、あくまで“大別すると”というもので、実際には患者さんそれぞれの病気の種類、がん患者さんならそのがんの種類、医療のいかんによって個人差があります。1,000人いれば、1,000種類の最期があります」

 

■ドラマのような“最期の時”は少ない

 

ドラマで描かれるような感動的な“最期の時”はあるのだろうか?

 

「緩和医療医としてさまざまな最期を看取りました。例えば、医学的な常識では考えられない状態にありながら、しっかりと自分を保って生き、家族の絆を確かめてから亡くなられた方もいます。そういった最期に立ち会いますと、私自身、いろいろと考えさせられます。ですが大体において“リアルな死”は、“作り物の死”のようにきれいごとでは済まされないです。人間の本性があらわになる場面もあり、ドラマのような美しい最期はそう用意されていません」

 

■おなじみのセリフ『余命●●か月です』は、実際には使われていない?

 

緩和医療の現場では、余命宣告もドラマとは少し違うという。

 

「ドラマの医者がよく言う『余命3か月です』といった表現も、私たち緩和医療医はあまりしません。余命予測を伝える際は、年単位、月単位、週単位、日単位、時間単位に、“長い”“短い”といった形容詞をつけて表現することが多いですね」


■余命週単位から日常の立ち振る舞いが困難に

 

死ぬときに人は、具体的にどう変化していくのだろうか?

 

「個人差が大きく、あくまで時期と症状は参考程度に聞いていただきたいのですが、がんの場合、日常の立ち振る舞いが障害されるのが余命週単位に入ったころです。そこから状態が悪化し、余命日単位に入るとだんだんと眠っている時間が増えてきます。余命24時間前頃が最も苦痛が強いようで、見ている者にも辛い時間です。それを乗り越えれば、多くの場合は、最期は穏やかな時間が待っていると思われます」

 

以下に、大津先生が語ってくれた余命単位ごとの変化の一例をまとめてみたい。

 

【余命週単位】

 

普通のだるさとは全然違う全身の倦怠感。むくみが目立ってくる。食欲不振が強くなる(ただし、余命が週単位以下の場合、どんなに栄養を取っても状態の改善は見込めず、延命効果もおそらくほとんどない)。歩くのが大変になる。しゃべりにくくなる。耳が聞こえづらくなる。ベッドの上での生活が中心になる。

 

【余命日単位】

 

寝ている時間が増えてくる。時間や場所、人の感覚があやふやになる。床ずれが出現する。会話や応答の障害が現れる。(家族の心労も募ってくる時期でもある)

 

【余命時間単位】

 

意識は低下し昏睡状態に移行する(2割程度、急変が起こる可能性あり)。

 

■患者さんの耳は最後まで聞こえている?

 

最後に大津先生から、患者さんの看取りに際して注意してほしい点があるという。

 

「患者さんの聴覚は最後まで保たれていると言われています。ですから、お葬式の話などデリケートな話題は、部屋を移したほうがベターです。寝たきりで眠っているようにみえる患者さんでも、耳元で優しく語り掛けなどしていただければと思います。周囲の方の温かいお声がけが、死出への旅を安らかなものにするかもしれませんから」

 

 

【著者略歴】

大津秀一(おおつ・しゅういち)

茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。緩和医療医。日本緩和医療学会緩和医療専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、日本老年医学会専門医、日本消化器病学会専門医、2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科専門研修後、日本最年少のホスピス医(当時)として勤務したのち、在宅療養支援診療所勤務を経て、2010年6 月から東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターに所属し、現在緩和ケアセンター長。著書多数。

 

 

『死ぬときに人はどうなる 10の質問』

 

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著者:大津秀一 
価格:620円+税
出版社:光文社(知恵の森文庫)

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