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「世の中には、いろんな辞書があります。私たちにとって辞書は、多くのことを知っている“学校の先生”のような存在。でも先生が絶対とは限りませんよね。間違うこともあるし、先生によって言うことが違うことも。辞書も同じで、絶対的に正しいものはありません。そんな辞書のなかで、『広辞苑』は“校長”のような存在。キャリアがあって、矢面に立たされた経験もあり、堅物だった校長ですが、今回の改訂でイメージを一新。これは大きな事件です」

 

そう語るのは、自称“辞書芸人”で漫才コンビ「米粒写経」のツッコミ担当・サンキュータツオさん(41)。“国民的辞書”といわれる『広辞苑』が10年ぶりに大改訂。内容を見直し、“第七版”として発刊された。’55年に発刊された『広辞苑』は今年63歳! 還暦を超えて、どんな変化を遂げたのだろうか――。

 

「『マンガ』『アニメ』『特撮』の分野の新しい項目の執筆、掲載されている項目の加筆修正の依頼があり、半年ほどかけて書き上げました。日本でもっとも売れている半面、日本一クレームの電話がかかってくる辞書でもあります。作業はかなり重圧でした」(タツオさん・以下同)

 

日本語学者の顔をもつタツオさんは、第七版の執筆者の1人として名を連ねている。

 

「画期的なのは僕が担当したなかで『少年マンガ』『少女マンガ』『ボーイズラブ』などが新たに収録されたこと。また『二次元』という項目に《アニメ・ゲーム。また、そのキャラクター》という説明が追加されたり、『アニメ』という項目のなかに、『――ソング』という形の小項目が加えられたりしたことです」

 

原稿を仕上げたあとは、編集者の手に渡り、発刊されるまでは、タツオさんでも、何が収録されたかわからなかったという。

 

「できあがりを見て『ヤバイ』『お姫さま抱っこ』『チャラい』などの新語が入っていて、これまでの『広辞苑』と比べても、かなり柔らかくなった印象を持ちました。無口で父性の権化だった人が、聞き分けがよく、温和になったような印象です」

 

『広辞苑』には、ほかの辞書には載っていたり、一般的に使われていたりする言葉でも、“ふさわしくない”と未収録になっているものも少なくない。タツオさんが提案した言葉から、収録が見送られたものもあるとか。

 

「『ツンデレ』は、すでに多くの人たちに定着していると思いましたが、見送られてしまいました。スラング的な言葉と受け止められたようです。もし入っていたら、“では、『壁ドン』は?”という議論があったかもしれません。また、『ミッキーマウス』や『ドラえもん』が載っているので『マリオ』も、入れてもいいかなと思いましたが不掲載。収録するかしないかは編集部が全体のバランスを取りながら選んでいくようで、悔しいところですが、そこで辞書としての“個性”が培われていくのでしょう」