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現在、女性の伝統工芸士は全国に614人。女性蔑視が当たり前だった職人の世界で戦う彼女たちは、女性目線の新たな感性で優れた作品を生み出し続ける。そんな男社会だった“伝統”に風穴を開ける、京都で活躍する女性伝統工芸士を紹介。きらめく用の美はまさに匠の業だ。

 

【京友禅】大石和泉

 

「もともとは画家志望で美大に進学したいと思っていたんですけど……」

 

大石さんはこう言ってはにかんだ。高校3年の夏休み、油絵の先生の紹介で友禅の工房を訪ねたのがこの道に入る契機だった。

 

「受験勉強の合間を縫って見学に行ったんです。そしたら、社長さんが『4年間、洋画を勉強して来ても同じ。すぐ来なさい』と誘ってくれて。私もどこか受験から逃避したい気持ちもあったのかな。筆を持ってできる仕事だからいいかな、って」

 

こうして島根の進学校から京都の職人の世界に飛び込んだ。

 

「週休二日で残業もなし。よく言われる職人の厳しい洗礼や、女性だからと差別されるような苦労もなくて。楽しく技術を学ばせてもらいました」

 

6年間の修業後、結婚を機に独立。’09年には「京友禅」の伝統工芸士にも認定された。友禅には図案を描くところから、彩色、蒸し、仕上げまで、およそ8つの工程がある。大石さんがこだわるのは、図案のもととなるスケッチだ。

 

「あちこち歩いて、スケッチしています。嵐山の渡月橋の上から川面をじっと眺めてスケッチしたり。写真を撮れば済むのでは、とよく言われるんですが、私はそれではダメ。図案を描くときも、一度スケッチすると手が覚えている、そんな感覚があるんです」

 

作品は作家協会の公募展でも写実的なデザインが高評価を得ている。

 

「審査員の美術館の館長さんや日本画家の先生たちは、着物というより1枚の絵を見るように評価してくれる。画家志望だった私には、それが何よりうれしいんです」

 

【大石和泉/おおいしいずみ】

’51年、島根県出身。高校卒業後、京都の友禅工房に入社。25歳で独立。’09年、伝統工芸士に認定。’16年、日本染織作家協会公募展で文部科学大臣賞受賞。

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