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資格といえば、“キャリアアップ”や“昇給”のために取得するもの、と考えている人は多い。しかし、資格はもはや、“いまの仕事”でステップアップするためだけに取るものではなくなってきている。生活のなかで直面する“ピンチ”を解決するヒントになるような、役立つものにあふれている。

 

高齢者の4人に1人が認知症と“予備群”という時代。認知症について正しい知識とケア方法を勉強して取得できるのが、「認知症介助士」だ。50代でこの資格を取得した花井育代さん(62)が、取得のいきさつを話してくれた。

 

「4〜5年前に、自宅の前の掃除をしていたとき、不安げに歩いている70代後半の女性がいました。声をかけたら、ホッとした顔をして、いろいろ話をしてくれましたが、あとで近隣に住む人が、軽い認知症によって迷子になっていたということがわかって……。会話もできて、普通に社会で暮らしているのに認知症を抱えている人たちが身近にいることがわかり、もっと認知症について深く知りたいと思ったんです」(花井さん・以下同)

 

「認知症介助士」は、セミナーに参加すれば、最短1日で取得可能。しかし、単にマニュアルを覚えるだけではない。

 

「一口に認知症といっても、発症がわかりにくいものがあります。普通に散歩しているようでも、実は徘徊だったり、スーパーでお金を払わずに商品を食べてしまったりと症状もさまざま。ケア方法を間違えると、認知症が進行してしまうこともあるのです。認知症の方へは、マニュアルでは対応できません。その人の尊厳を傷つけないように、相手の気持ちに寄り添うことが大事です」

 

航空会社で国際線の客室乗務員だった花井さん。資格取得前は悠々自適なシニアライフをイメージしていたという。現在は「認知症介助士」の知識を活かし、講演やセミナーなど忙しく走り回る。

 

「スーパーや百貨店、銀行の窓口などで、認知症の無理解によるトラブルが今後も増えていくでしょう。認知症に対する知識を身につければ、そういった場所に勤めていても、お客さんの症状に気づきやすくなります。大事なことは、地域社会での認知症支援が広がること。これからの人生は、自分の生きがいとして、認知症の支援活動を続けていきたいと思っています」

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