今なお、コントロール不能状態が続く福島第一原発の汚染水問題だが、モンゴルでも放射能汚染が原因とされる深刻な事態が起きている。この1年、放牧中の家畜が突然死したり、奇形出産が相次いているというのだ。

 

モンゴル事情に詳しい大阪大学准教授・今岡良子さんが放射能汚染の実態を訴える。

 

「異常に気付いたのは昨年の12月末でした。遊牧民から情報が入り、モンゴルのNPO団体が現地調査を行った結果、異常な死に方をしている家畜や奇形の家畜が何頭もいることがわかりました。その後、家畜被害はどんどん拡大し、現在120世帯で1000頭近くの家畜が被害にあったと推定されています」

 

家畜被害が出ているのは、首都ウランバートルから南東450キロの場所にある地域。ドラーン・オール鉱山という“ウラン鉱山”があり、そこでは’10年12月〜’11年5月まで、ウランの試験採掘が行われていた。

 

「その採掘施設から6キロ離れた場所で幕営しているノルスレンさんの話では、自分が飼っていた子牛が、昨年の12月末から今年の1月末までに22頭も異常死したそうです。その後、この地域で幕営している遊牧民から、突然死だけではなく、2つ頭の子羊や3本足の子牛、一つ目の馬、歯や首がない子ラクダが生まれたなどの報告が出され、異常な実態が明らかとなりました」(今岡さん)

 

試験採掘をしたのはフランスのウラン開発会社。半年間で2700トンのウランを抽出した。今岡さんによると、採掘当時、残土周辺は塀が巡らされておらず、家畜は自由に近づくことができたという。そして被害はすでに人間にも出始めているそうだ。

 

「子どもが風邪をひきやすくなったり、一度風邪をひくと2カ月治らない。ウラン鉱山で働いていた労働者の髪の毛が抜けた、という報告もあります。福島の場合、モンゴルのウラン鉱山周辺よりも、はるかに高い放射性物質が原発周辺にまき散らされました。モンゴルの家畜がこのような状態になっていることを考えた場合、福島の家畜はもっと影響を受けているかもしれない、そう心配しています」(今岡さん)

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