来月5日で福島第1原発事故発生から1千日を迎える。そのころには、福島第1原発では日本の未来を左右する重要な“作業”がすでに始まっている。失敗したら東日本壊滅!そんな最悪のシナリオも囁かれる恐怖の作業とは何か。また、1千日を迎える作業員や東電社員の声を聞いた。
爆発した原発の燃料プールから1千533本の燃料集合体(燃料棒を束ねたもの)を取り出すという史上初の作業に臨む東京電力。6日、現場となる4号機の内部が公開された。そこでは、チリひとつ落ちていない機内が披露されたが、現場の作業員は“お化粧直し”の内幕をこう暴露する。
「6日の朝にやっと最後のパネルを張り終えた。見かけだけでもきれいにしないとね。でも1階2階は震災直後のまま。瓦礫は散らかり放題だよ」
今回の作業は5階部分に設置されたクレーンを使う。4号機のプール内の燃料集合体を水中でキャスク(輸送容器)へ移し、フタを閉めて密封し除染。さらに約30メートルの高さから地上で待つトレーラーに降ろすというものだ。NPO法人原子力資料情報室の伴英幸氏はキャスクの落下を懸念する。
「仮に落下の衝撃でキャスクが破損し、中の燃料が露出した場合は線量が高すぎて誰も拾いに行くことなどできない。近づいたら死んでしまうんです」
事故から1千日。構内の利便性やテロ対策などはだいぶ前進したが、変わっていないものもあるという。
「2号機は建屋が爆発してないので、中に汚染物質がこもった状態。仲間に話を聞いたところ、40分~50分で300マイクロシーベルト/時近く浴びたこともあるという。浴びつづけると6日で働けなくなる数字だ。1号機から3号機の情報はまったく入らない。東電の構内事故の発表は遅いし、発表さえないときもある」(フクイチの4号機で働く50代の技能者の男性)
一部の現場の危険度と隠蔽体質は変わってないらしい。むしろ悪化しているものもある。事故直後と違って、多くの作業員の日当は2万円以下。4号機の土工職の男性(30代)は、「ホテル代と朝晩の食事以外で1日1万9千円もらってる。ただ後から入社したヤツは1千円下がってたな」と語る。さらに、東電の経費削減のしわ寄せが作業員に及んでいるという。
「無料で支給されていた昼食は打ち切られ、以前は新品の下着が配られていたけど、今は臭いが取れていないものを使い回すようになった。全面マスクもときどき傷だらけのヤツがあって、視界不良で怖いときもある。防護服の質も相当落ちた。前のはデュポン製のオイルびきで分厚かった。最近のヤツはペラペラで水を吸っちゃうし、破れやすい」(前出・技能職の男性)
事故処理は遅々として進んでおらず、東電と政府の無策のツケは現場を苦しめている。前出の技能職の男性は慨嘆する。
「大成や鹿島の連中なんか、以前はホテル泊だったのがプレハブでの寝泊まりになった。こんな状態の現場でいい職人が集まるわけがない。事故当初はいい人材がいたけど、線量をいっぱい食らってしまっている。職人のレベルが下がってくるから工期が遅れるという悪循環。ましてやオリンピックが決まった。俺だって『忙しくなるから東京へ戻ってこい』と会社から言われている。本気で復旧する気があるのかな」