「周りからバカじゃないのか、と言われましたが、どれだけ大変なのか、テレビで見るのと、実際に見るのでは重みが違います。どうしても被災地の方々と心を共有したかったんです」

 

東日本大震災の直後からボランティア活動をし、4年間に幾度となく被災地に足を運んできた杉良太郎(70)。3月5日には東京電力福島第1原発に入り、作業員たちを激励した。その活動には25歳のときのある慰問が関係している。

 

「’70年に広島の原爆病院・久保病院を訪れ、歌を歌った後、被曝された方々と握手をしたんです。その手を見たら水ほうやケロイドだらけで、一瞬、躊躇してしまったんです。なかには抱きしめてくださる方もいて、白いスーツには化膿した液が、地図のように広がって……。その後、トイレに行って手を洗ったんですが、その気持ちがよくなかった。一生懸命落とそうとしていた。そのときにこれでは偽善者じゃないかと……。それがずっと胸につかえているんです」

 

3年前、放射能汚染で苦しんでいる福島の人の優しさに涙したことも、今日までの行動につながっている。

 

「原発事故によって避難している人たちと会っていたときに、ある方が箱いっぱいのたらの芽を持ってきてくれた。『粒がそろって、おいしそうだね』と言ったら、その方は『これ食べられないんです。せっかく来てくれたのに、お土産がないから、見るだけでも楽しんでくれませんか』と……」

 

“喉元すぎれば熱さを忘れる”。そんな国民性を持つ日本人に、今こそ被災者たちには、私たちの「思い」が必要だと、強く訴える。

 

「僕の活動で唯一、一貫しているのは『明日はわが身』ということ。とくにこの日本に住んでいるかぎり、何が起きるかわかりません。人からの支援を何も受けないで一生をまっとうできるなんて、誰も保証してくれません。だからこそ、被災者の方々を忘れてはいけないんです」

 

そんな杉が、最後にこんなメッセージを残してくれた。

 

「売名行為ですか?と、これまで嫌というほど聞かされてきました。もう反論する気もないけれど、売名であろうとなかろうと、やったほうがいいんです。1億3千万人が売名でいいから、被災者に心を寄せてください」

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