「バヌアツはいま……本当になにもかもなくなってしまった状態なんです」と、悲壮感ただよう表情で訴えかけるのは、元アナウンサーの相川梨絵さん(37)。’12年の結婚以来、愛する夫や娘と暮らす南太平洋の楽園が、3月13日深夜、史上最大級のサイクロンに襲われた。相川さん家族は、たまたま日本に一時帰国中で難を逃れた。

 

日本の気象庁は最大風速54メートルを超えた台風を「猛烈な」と表現するが、今回のサイクロンの最大風速は、じつに90メートル超ともいわれている。南北に連なる80の島からなるバヌアツ共和国を狙ったように縦断したサイクロン。暴風雨で、ナタンゴラという植物を編んで屋根にした簡素な造りの島の家々は、軒並み倒壊してしまった。

 

20日現在の現地からの報告では、全世帯の9割が破壊されたという。自給自足で暮らす村々の畑も壊滅状態。雨水をタンクにため、生活用水としてきたが、そのタンクも多くが押し倒されてしまった。水も食料も不足した状態だ。

 

「衛生環境も悪化しています。少し前から流行の兆しのあった、フランベジア(森林梅毒とも呼ばれる)という感染症が蔓延しているそうです。また散乱したがれきに水がたまって蚊が大量発生したら、マラリア流行の恐れも。薬はあるんですが、道路が寸断されて運ぶ手段がないんです」(相川さん・以下同)

 

そんなバヌアツの惨状に、移住当初から親善大使を務める相川さんは、家を失ってしまった被災した人たちへトタン屋根を送ろうと思い立った。屋根が吹き飛んだうえ、その材料となる植物自体が根こそぎ飛ばされてしまっているからだ。

 

「自給自足が原則のバヌアツでは現金収入のある仕事を持っている人は限られています。そのため平均月収は約1万円とも、それ以下とも。そんな人たちが、あの東日本大震災のとき、なけなしのお金をはたいて総額およそ500万円もの義援金を日本に送ってくれたんです。日本人はいまこそ恩返しをするときじゃないか、そう思っています」

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