アベノミクスがうまくいくかどうかという予想の範囲の議論より、どちらに転んでも私たちの生活を守る方策が知りたいーー。

 

そこで具体的にアベノミクス『楽観シナリオ』『悲観シナリオ』、そして最悪のケースを想定し、『破綻シナリオ』まで、資産防衛術と陥りやすい落とし穴を『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』(ダイヤモンド社)が話題を集めている橘玲さんに解説してもらった。

 

『楽観シナリオ』ーーアベノミクスが成功し再び好景気が始まる。大胆な金融緩和の成功で、庶民までお金が回り始め、消費が活性化する。モノが売れて、物価の上昇とともに企業の業績は上がり、賃金もアップし、やがて雇用にも反映されていくーー。

 

「もっと豊かに、という期待感から積極的に投資をしなければという心理が働きがちで、そこは要注意です。目端の利く投資家は昨年末の総選挙のころに一生懸命株を買っていて、4割以上上昇したのですからいまはもう売りに転じています。いま買おうとしている人は大きなリスクを負っています」

 

人気の高い金融商品でも油断はできず消費者が損する仕組みになっている”不合理商品”もある。煽られて投資に走ると危険を伴うと橘さんはクギを刺す。

 

「和牛の安愚楽牧場のように”あの人”が推奨しているから、とか過去に高配当を出しているから、という理由で投資するのはきわめて危険です。特に高齢者の方々は若い人と違って資産を失ったら、もう挽回できない。投資をしないことが最善の人にとって、あくまで最強の金融商品は流動性のある《普通預金》です」

 

『悲観シナリオ』ーー大胆な金融緩和もむなしく、結局、お金は庶民まで回らず、トクをするのは富裕層だけだったという展開に。相変わらず買い控えは続き、物価は下がり続け、デフレ不況が続いていくーー。

 

「デフレ下では名目金利は低いけれど、物価の下落で生活コストが3%下がれば、普通預金に預けているだけで3%の金利が付いているのと同じ効果があります。何もしなくても現金の価値が上がっていくので、昇給がないからといっても資産運用や海外投資をあせってする必要はないのです。日本の財政が破綻に向かっているとしても、当分は金融資産は普通預金で持っているほうがいいでしょう。こんなときはなるべく借金をしないことです」

 

『破綻シナリオ』ーー国債価格の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥るーー。

 

「財政破綻シナリオに進むには、国債の暴落をきっかけとする金利の上昇から始まります。金利が大幅に上昇しなければ景気の回復につながるので財政破綻にはなりません。金利が上昇するときに相変わらず強いのは普通預金です。ただ、本格的な金融危機になれば、普通預金だけでは資産を守ることが難しくなります」

 

また、高金利と高インフレが続けば円の価値は下がり、通貨(円)はいずれ安くなるので、円安に向かうはずであると橘さん。そんなときにはどんな商品で備えておくべきなのか。

 

「高インフレになれば生活コストが上がるので、預金の価値は目減りしてしまいます。この20年デフレ経済が続いていたのでインフレをイメージしづらくなっていますが、実際に物価が上がってきたら、インフレ率に応じて元本が増えていく金融商品の『物価連動国債ファンド』で備える手も」

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