「2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まりましたが、オリンピックがもたらす家計への影響は、それほど大きなものではないと思います」

 

こう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。東京2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会は、東京にオリンピック招致できた場合、’13〜’20年までの経済効果は約3兆円、雇用誘発は約15万人と試算。デフレに困窮する日本経済にとっては救世主のように映るオリンピック招致だが、荻原さんは次のように見ている。

 

「試算が正しいとしても、これは8年間の累積です。平均をとれば、年間3,750億円。’12年度の実質国内総生産(GDP)が519兆円でしたから、0.1%もありません。雇用がすぐおこるわけでもありません。今後プランの検討から始めるので、今、求職中の方の受け皿となれるのかは疑問です」

 

また、大きな課題がオリンピック終了後の経済の冷え込みだ。’98年に冬季オリンピックを開催した長野県は、施設整備にかかった借金と、オリンピック後、年間100億円の施設維持費に県財政が圧迫された。

 

「今回は既存施設の再利用が中心ですが、長野の教訓を生かし、オリンピック後の施設利用や維持費の負担、雇用の継続などにも十分な対策を講じていただきたいと思います」

 

そして、期待が寄せられている株価だが、「大きな影響はないでしょう。短期的な関連株の上昇はあるかもしれませんが、今、マーケットの関心事はシリア情勢です。アメリカやシリアが動けば、オリンピック効果は消えてしまいます」と荻原さんはいう。

 

「東京招致の強みは、関連費用の4,000億円がすでに積み立てられていることです。これも元は税金ですが、開催後に都が大きな借金を抱えることはないでしょう。都財政が崩れ都民へのサービス低下を招く心配が少ないことは、いい点だと思います。そもそもオリンピックはスポーツの祭典ですから、純粋に競技を楽しみたいものです。特需的な経済効果まで期待するのは、本末転倒でしょう」

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