「トヨタや日産など、アベノミクスによる円安の恩恵を受けて業績好調となった企業の給与増が見込まれますね」(労組関係者)
毎年春に労働条件の改善を求めて行われる春闘。アベノミクス効果がようやく出てきた今春、社員全員の賃金を上げるベースアップ(ベア)の機運が高まっている。
「デフレ脱却を唱える経団連からの要請を受けて、全体的な賃上げムードが高まっていて、大手企業もこれに倣って応えているという構図です。安倍政権は大幅な法人税減税を財界に示し、見返りに企業側に賃上げを求めましたので、逆らうわけにはいかないという政治的理由もあるようです」(前出・労組関係者)
春闘は毎年トヨタが回答を出し他の企業がそれに倣うのが常となっているが、同社は6年ぶりに4千円のベースアップを要求し実現させようとしている。しかし、経済アナリストの森永卓郎氏は語る。
「輸出関連企業は円安のお蔭でとても儲かりました。復興予算で儲かった建設業関連も良い結果になるでしょう。トヨタ、日立、それに銀行業界など華々しく好景気な話も出ています。しかし、実はベースアップできているのは大手だけで、中小企業での増額はあったとしても微々たるもの。ベースアップすらできない企業が多いというのが現状です」
森永氏は4月の消費税増税がベアの上昇分以上の負担を家庭に強いると警鐘を鳴らす。
「アベノミクスの景気拡大は4月に消費税が8%になるまで。つまり、余命1カ月だと思います。4月からは缶ジュースも10円上がって130円になるし、タバコも20円値上げされる予定です。便乗値上げも始まっていますから、物価が大きく上がるのは間違いない。そうなると、結果的に賃金が下がるのと同じこと。私の予測では実質賃金は今年、3.5%のマイナスになる。これは統計が残っている限り、戦後最大の所得減少なんです」
ベースアップがない多くの企業は、増税後に向けての備えが必要のようだ。