いよいよ4月1日に迫った消費増税。すべての値段が上がるかと思いきや、今、「値段据え置き」「値下げ」が次々と発表されている。ファイナンシャルプランナーで節約アドバイザーとして活躍する丸山晴美さんは、この現象について次のように解説する。

 

「日本の企業は消費者にやさしい。海外では、インフレになったら物の値段が上がるのは当たり前です。でも日本では、買い手の事情を考慮して、逆に値下げする企業も少なくありません。ここまで個々の消費者を考えて商売をする国は、なかなかないでしょう」

 

プライベートブランドのメリットを利用して価格を抑えたのは、大手スーパーマーケットのイオンだ。同社は約6千品目を展開するプライベートブランド「トップバリュ」の約半数の価格を据え置く。

 

「ダイエーやピーコックがイオングループに入ったことで、取扱量が増え、調達費用を抑えることができました。また、本年は『トップバリュ』ブランド40周年にあたります。これを機に、少しでもお買い得価格で提供できるよう取り組んだ結果、偶然、消費増税のタイミングと重なりました」(イオン・広報)

 

日用品を多く取り扱うホームセンターのカインズも、プライベートブランドの価格は値上げしない。商品は季節に応じて入れ替わるが、常時1万2千〜1万3千アイテムと品数は多い。洗剤やトイレットペーパーなど、使用頻度の高い日用品も含まれている。

 

「弊社のモットーは『エブリデー・ロープライズ』。買いやすい価格を保証するため、価格を現行のままとしました。今までもローコストを心がけてきましたが、今回、あらためて物流費用の見直しを行っています」(カインズ・広報)

 

同じコスト削減でも、生産地の変更で値段を下げた企業もある。婦人服チェーンのしまむら、ハニーズは、4月1日以降も現在の価格を変えないと発表している。

 

「衣料品業界では、今、生産拠点を中国から、より人件費の安い東南アジアのバングラデシュやミャンマーに移す動きが強まっています。そうして生産費用の削減を図る企業は多いでしょう」(丸山さん)

 

また、宣伝効果など戦略として集客を見込んで値下げしたのは、食品から日用品、衣料品まで幅広く扱う無印良品だ。価格が変わらないのは、全商品のうちの約75%に及ぶ。

 

「お客さまにいちばんわかりやすく、かつ混乱をきたさない方法を考えた結果です。日ごろから、製造過程や原材料の選定について改善を積み重ねていますので、増税分は弊社で吸収できると判断しました」(良品計画・広報)

 

そんな“企業努力”によって、4月以降の“値段据え置き”商品は作り出されていた。

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