女性の働く気持ちをそぐ制度だと廃止の対象になっている配偶者控除。納税者の配偶者が年収103万円以下の場合、納税者の所得税を38万円、住民税を33万円控除する制度だ。この控除をうけるため、年収103万円以上は働かないという女性もいることから、廃止すべきといわれているが、経済評論家・荻原博子さんはこう言う。

 

「実は、いわゆる『103万円の壁』はもはや存在しないも同然です。なぜなら、夫の総所得が1000万円までの世帯では、妻の年収が141万円未満なら、控除額が段階的に下がるものの、配偶者特別控除を受けられるから。妻が105万円以上稼ぐと控除額は36万円に、110万円以上では控除額31万円と減り、141万円で控除がなくなるのです」

 

それでも負担増より妻の収入アップ分のほうが多いので、世帯収入は増え続ける。もっと働くほうが得なのだ、と荻原さん。ただ。気を付けなければならないことが2点あるという。

 

「1点はいわゆる『130万円の壁』です。会社員の妻が年収130万円を超えると、社会保険上、夫の控除から外れます。自分で国民健康保険・国民年金に加入すると年間約25万円必要で、手取り収入が減ります。さらに’16年から、従業員500人以上の会社では、パートでも勤務時間によって社会保険の加入が義務化されます。130万円の壁など関係ない方が増えるでしょう」

 

もう1点は、夫の会社の家族手当だという。支給規定や支給金額は会社によってさまざま。そもそも家族手当のない会社もあるので、確認をするように、とのこと。荻原さんは最後に言った。

 

「女性の労働力を活用したいなら、配偶者特別控除をきちんと説明し、103万円を気にせずもっと働こうと宣伝するべきではないでしょうか。それをせずに、配偶者控除の廃止へと向かうのは、形を変えた増税にほかなりません。政府がまず取り組むべきは、配偶者控除の廃止ではなく、保育や介護の問題でしょう」

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