「リタイア後の生活設計で、まず決めるべきことは住まいをどうするか。住居費によって、そのほかの生活設計が変わってきます。ほとんどの方は節約を頑張るというようなことを考えがちと思いますが、実は住居が先なのです」

 

こう話すのは、お金に関する講演・相談などで活躍する、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。“退職金で住宅ローンの残債を返済”することには注意したほうがいいと教えてくれた。

 

「たとえば年間200万円を、60歳を過ぎても返済し続けるというローンを組んでいる場合、退職後はそのままローンを払い続けず、たいてい退職金で残債を返済してしまいます」

 

現在55歳で退職まで5年ある人であれば、ローンの残りは退職金でまとめて返すと考えがち。しかし、畠中さんはこう分析する。

 

「住宅ローンの借り換えができたら、かなり返済額を圧縮できるかもしれません。でもこれは、条件に合わずできないケースも多い。また、繰上げ返済は手元の貯金が減るので、50代になると嫌がる方も多い。気持ちはわかりますが、退職金を多めに残すためにもぜひ検討を。そのほかの手段として、残り5年でも、月々の返済額を1万〜2万円くらい上げることで、退職金で返す金額をかなり抑えられるようになります。これを条件変更といいます。繰上げ返済が難しければ、返済額をアップして、返済期間を短縮する条件変更を検討してみてください。借りている金融機関に申し込めば、手続きできるはずです」

 

返済期間を短縮したり、ボーナス併用払いに変えてもらうと効果が高い。50代になって、子どもの教育資金がかからなくなったご家庭は、ボーナスで1回5万〜10万円多く払ってみては。6万〜7万円の増額ならなんとかなる家庭も多いはず。これができたら、それだけで返済期間が何年も短縮する。

 

「当然、払う利息が減り、退職金で払う残債も減ります。厳しいと思われる方は、月額数千円でもかなり違います。50代は、いろいろなことを最後に選択できる時期にもかかわらず、時間がないからと、いちいち契約書を見直したりといったことが面倒くさいという方も多いのです。でも、その手間が退職時に必ずプラスで戻ってきますから、ぜひやっていただきたいです」

 

返済期間を2年短縮できると、たとえば65歳で完済するローンなら、それを63歳で終わらせるなど、退職金を使わずに継続雇用の間に完済するプランに変更できるケースもあるそうだ。

 

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