「空き家問題が深刻です。日本には今、約820万戸の空き家があり、空き家率は13.5%(’13年・総務省)。実に、住宅8軒に1軒以上が空き家という計算です。そのうえ、このまま何の対策も取らなかった場合、’33年には空き家は2千万戸を超え、空き家率は30.2%になると予測されています(’15年・野村総合研究所)。政府も昨年あたりから、本腰を入れた対策を打ち出し始めました。今年4月からは、相続した空き家を売却した際に、3千万円の特別控除が使えるようになります」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。空き家の増加は社会問題となっている。だが、空き家を賃貸に出しても初期投資がかかり、借り手がつくとは限らない。放置したら固定資産税が6倍になることも。萩原さんは「控除の条件は細いですが、売却、検討してみては」と語る。
「通常、家を売ると、売却額から、購入時の費用と、売る際の経費を差し引いた売却益に税金がかかります。ただし、売る前まで住んでいたマイホームには、以前から3千万円の特別控除がありました。つまり売却益が3千万円以下なら無税です。ところが、相続した空き家にはこれまで特別控除はなく、以前の住人が5年以上住んでいたら売却益の20.315%、税金がかかりました。4月からは、最大3千万円の特別控除が適用されると、約609万円の節税が可能です」
では、この特別控除の適用には、どんな条件があるのか。
「まず、’81年6月以前に旧耐震基準で建てられた戸建て住宅であること。次に、住民が亡くなって相続し、以来空き家になった物件で、売却にあたっては、家を解体し更地にするか、耐震リフォームを施す必要があります。売却額が1億円を超えると特別控除は適用されません。また、相続後に一度でも賃貸に出すと対象から外れます」
もし売却するなら、中途半端に賃貸に出してはいけない。
「さらに、売却の期限があります。今年4月から’19年末まで、相続から3年後の年末までに行わなければなりません。たとえば、’13年に相続した空き家であれば、今年4月〜年末までに売却すれば特別控除が使えます。’14年の相続なら、来年末までです。相続空き家を売るには遺品の整理など大変ですが、3千万円の特別控除があれば、無税になる方も多いでしょう。期限に注意して、早めに決断したほうがいいと思います」
少子高齢化の今、一人っ子同士が結婚すれば、確実に実家が1軒余る。誰もが身近な問題として、空き家について考えるとともに、「新築至上主義」も見直す時代に入ったのかもしれない。