これまで税金や保険料をちゃんと納めている人なら当然のこと!“困ったとき”は、行政サービスを最大限に利用して、そのお金を使わせてもらいましょう!!
「マイナンバーカードの申請・発行が始まって2年半ほどたちますが、普及率はわずか11%ほど。そのため、カードで利用できる『マイナポータル』という個人向けサイトも昨年11月に本格運用されたのに“あまり知られていない”というのが現状です。これは、パソコン上やスマートフォンで一部行政手続きができますし、児童手当など子育て関連のサービスも申請可能。“カンタンで得する”のにもったいない……」
そう話すのは『最新版 届け出だけでもらえるお金 戻ってくるお金』(宝島社)を監修した、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんだ。マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービス。
「パソコンを利用する場合は、家電量販店で2,000〜3,000円で販売されているマイナンバー対応のICカードリーダライタを接続。同機能を内蔵している一部Android端末・スマートフォンでも利用できます」
現在のサービス内容について、内閣府の大臣官房番号制度担当室の担当者が説明してくれた。
「税や社会保障に関しての個人情報を閲覧できます。またサイト内の『子育てワンストップサービス』では、保育園の入園手続き、個々が受けられる児童手当やひとり親支援の申請ができます」
しかも、今後は介護や健康の分野に広がる見込みだという。
「各地域で独自に行っているサービスも、マイナポータルを通して検索・申請できるよう、全国の市区町村などに呼びかけています」
東京都港区では「定期予防接種の費用助成」、新潟県三条市では「児童クラブ利用料減免申請」などで、すでに電子申請が可能だ。こうした流れに風呂内さんは期待を寄せる。
「さらに、住んでいる地域や家族構成を入力することで、利用できるサービスをリスト化できるようになれば、気付かないで“申請漏れ”ということもなくなるはず」
将来はこのマイナポータルでの申請も期待したい“注目の行政サービス”について、風呂内さんが解説してくれた。
■住まい
住宅関連では、地震のリスクの高まりや超高齢社会に対応したサービスが目立つ。
「耐震補強は、’81年5月31日以前に建てられた住居に対し、現在の耐震基準を満たす補強工事費用の10%(最高25万円)の所得税控除を受けられます。仮に10万円の工事を実施した場合、所得税が約1万円安くなります」(風呂内さん・以下同)
高齢になった親の独居などが心配な人は、多世帯住宅改修に対するサービスも押さえておきたい。
「浴室、キッチン、トイレ、玄関のいずれかを増設する費用(最大250万円)の10%が、所得税より控除されます」
これら耐震や多世帯住宅改修に関する減税は、’21年12月31日までの期限付きなので早めの検討を。同居ではなく、親の近くに住む人を対象にしたサービスもある。
「たとえばUR物件では、一定条件を満たした子育て世帯が親世帯の近くに住んだ場合、家賃の5%が5年間にわたって割引に。千葉県船橋市では、親世帯と同じ小学校校区、もしくは直線距離で1.2キロ以内の物件に住むなどの条件を満たせば、賃貸物件は不動産仲介手数料に対して最大10万円、購入物件に対しては建築費用、登記費用などに対して最大20万円の助成があります」
そして、都内だけでも80万戸を超えるという空き家について。
「倒壊の危険があるとか、景観を損なうなどの『特定空き家』に対しては、除去費用を助成する制度があります。これは多くの市区町村で実施しており、東京都文京区では最大200万円まで、杉並区では費用の80%(最大150万円)、長崎県長崎市では費用の一部(最大50万円)を負担してくれます」
■介護
少子高齢化の中、親や配偶者の介護問題は切実。高齢者施設に入居する資金がなければ在宅で介護をするしかない。その場合、自宅のバリアフリー改修は不可欠だ。
「65歳以上で日常生活が困難になってきた家族が対象。各自治体の条件を満たすと、階段やトイレ、浴室の手すりの取り付けや、和式トイレから洋式トイレに交換するなど、多い自治体で改修費用の80〜90%が給付されます。上限額は20万円ほどに設定されています。自治体以外にも介護保険を利用したサービスもあります」
認知症患者を介護している家庭は、徘徊で居場所がわからなくなってしまうことは珍しくない。
「GPSによる見守りサービスは各自治体で行っています。愛知県豊田市の徘徊者捜索機器利用促進補助金は、徘徊の恐れのある高齢者を対象に、市指定機器の初期費用について最大2万2,000円まで補助。広島県呉市は機器購入費用の75%、最大2万円の補助があります」
介護に必要な消耗品は、期間が長くなれば負担も大きくなる。
「おむつは現物支給のほか、月額最大5,000円までのおむつ代助成(東京都北区)があります」
そのほか車いすやつえの購入補助、レンタルなどを行う自治体も。知識さえあれば“税金が戻ってくる”貴重な機会を逃さないで!