ジャーナリストの山口敬之氏から強姦されたと、実名と顔を公表して訴えたフリージャーナリストの伊藤詩織さん(29)。6月28日、そんな彼女の闘いに密着したドキュメンタリー番組『Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)』が、イギリスBBCで放送されて大反響を呼んでいる。

 

同番組の中では、家族の写真がネット上にさらされたうえに、「売春婦!」などと、誹謗中傷の書き込みがあふれるネット掲示板を詩織さんが見てショックを受ける衝撃的な映像が放送された。

 

ほかにも、自宅に仕掛けられた盗聴器を詩織さんが発見するシーン。警察の取調べで男性警察官に囲まれ、等身大の人形を使ってレイプシーンを再現させられたという告白……。

 

だが、視聴者にもっとも衝撃を与えたのは、自由民主党の衆議院議員、杉田水脈氏(51)ではないだろうか。番組内では、杉田議員が出演しているインターネット番組『日本の病巣を斬る』の映像が紹介されている。

 

ゲストとして招かれた漫画家のはすみとしこ氏が「枕営業大失敗!!」と描かれたイラストを掲げて、詩織さんを侮辱する。それを見て、うれしそうに笑う杉田議員。その場には、財務省のセクハラ問題に抗議する女性野党議員に対して、「セクハラとは縁遠い人々」と発言して批判された自民党衆議院議員の長尾敬氏の姿もあった。

 

その映像の後、BBCによる杉田議員のインタビューへと続く。

 

「彼女の場合は、あきらかに女として落度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで記憶をなくして」と語る杉田議員。「社会に出てきて女性として働いているのであれば、嫌な人からも声をかけられるし、それをきっちり断るのもスキルの1つ」。さらに「嘘の主張をしたために」山口氏とその家族が脅迫されたと、詩織さんを非難する−−。

 

SNSのTwitterには、海外の視聴者から、こんな投稿が相次いでいる。

 

〈レイプされた女性を見下す日本人の態度にショックを受けた。安倍首相は恥を知るべき〉

 

〈いちばん腹が立ったのは、女性の敵が女性だったこと。被害者を支えるのではなく責めていた〉

 

人権問題に詳しい弁護士の武井由起子氏は、杉田議員の発言の背景を次のように分析する。

 

「男女格差を示す“ジェンダーギャップ指数”を見ると、イギリスは144カ国中、15位なのに対し、日本は114位です。男性優位の日本社会で女性が認められるためには、自分を押し殺し、男性以上に男性の主張を代弁する存在にならなければいけなかったのでしょう。そういう意味では、杉田議員はかわいそうな女性です」

 

ただし、“国会議員”という公職につく者を「かわいそうな女性」で済ましてはいけないという。

 

「国会議員は、国民のニーズや意見をくみ取って法律をつくるのが仕事です。その国会議員が、女性が飲酒してレイプされても、“女性の落度”と考えているのは大問題です」(武井氏)

 

さらに、杉田議員は山口氏が起訴されていないことを理由に、詩織さんが嘘をついていると断定しているが……。

 

「日本の刑事裁判は起訴後の有罪率が99%程度といわれており、裏を返せば、証拠が不十分で有罪にしにくい場合、起訴されない。とくに、密室で起こるレイプ犯罪は、目撃情報が少ないので、そうなりがちです。性行為の“同意”の有無も問題になりますが、抵抗できない女性も多い。こうした問題点を、杉田議員は認識していないのでは」(武井氏)

 

詩織さんは、杉田議員の発言を冷静に受け止めている。

 

「私に対しては批判的でしたが、番組内では彼女もハラスメントを受けたことがあると答えています。“断るのもスキルの1つ”、という部分に日本社会が映し出されているのではないでしょうか」(詩織さん)

 

いっぽう、杉田議員は自身のブログで、番組の内容が「切り取り」だとしたうえで、同様の主張を展開している。あらためて見解を聞いたが、回答は拒否された。

 

自民党の報道局にも見解を聞いたが、「女性に対する暴力を根絶するため、引き続き、政府と連携して必要な対策を講じていく」としたうえで、「議員個人の発言」であることや、詩織さんが山口氏に損害賠償を請求する民事訴訟が進行中なのを理由に「コメントは差し控えます」とのことだった。