「一応、私、(キャラが)おじさんみたいだけど『女性自身』も読んでいるんです。それで、パッと桑江先生の病院の記事が目に入って“オーッ”となって。(医療現場について)いろいろ文句を言ったり、問題点を挙げる人はいますが、実際に(改善策を)実行しているので、直接お目にかかりたくて来ました」

 

9月12日、野田聖子女性活躍担当大臣(58)が「みなみ野グリーンゲイブルズクリニック」(東京都・産婦人科)を視察した経緯を語った。

 

きっかけとなったのは、本誌9月4日号の「桑江千鶴子さんが『女性が一生働ける病院』を作るまで――」という記事だった。

 

24時間体制で大学病院などに勤務する、産婦人科や外科の女性医師は、出産や育児を機に一定期間、医療現場を外れざるをえない。

 

せっかく時間をかけて育てても離職のリスクがあると、最初から女性を受け入れない現場の医師もいる。東京医科大学が女子受験生の入試の点数を意図的に操作した問題も、こうしたことが背景にあるとみられる。

 

そんな現状を憂い、桑江千鶴子さん(66)は、今年6月に“女性医師が子育てしながら経験が積める”医療機関を開業した。ここでは、看護師も病棟、外来、手術と何でも担当できるように訓練し、育児中のスタッフを全員でサポートする体制を目指している。

 

12時にクリニックに到着した野田大臣は「しっかり勉強させていただきます」とあいさつ。暖色の照明とぬくもりを感じる木目調のフローリングを施したという院内を歩きながら、こう話す。

 

「病院にいることを忘れてしまうほどリラックスできますね。もう1回、子どもを産みたくなっちゃうね」

 

クリニックは現在、スタッフ30人中、26人が女性。今後、育児中の病院スタッフが利用できる保育施設や、産後うつに対応した産後ケア施設も計画されている。

 

視察後のランチミーティングでは「女子会みたいでいいですよね」と現場スタッフとの意見交換も行われた。そこで野田大臣が注目したのは、臨床医は“現場に居続けることが大事”ということだった。

 

出産・育児で、男性と同じように当直などのハードな仕事がこなせなくなると、多くの女性医師は常勤医から非常勤医へと働き方が変わる。経験の積み重ねが必要な手術の担当を外され、“第一線にはもどれない”と諦めてしまうケースも……。

 

だが、桑江さんのクリニックでは、大病院で常勤が困難になった3児のママさん医師が、当直・オンコール(時間外待機)をしなくても、帝王切開や婦人科の手術を続けられている。

 

「技術を衰えさせず(育児が一段落したときに)、大きな舞台に戻っていけるような“つなぎ”をしっかりしていることが、大きな発見でした」(野田大臣)

 

こうしたシステム作りができれば、出産しても活躍の幅が一気に広がると、桑江さんは語る。

 

「概して女性医師は病院側から敬遠されますが、患者さんからのニーズは高い。とくに産婦人科では、医師に出産や育児の経験があれば、患者さんとのコミュニケーションもさらにスムーズでしょう。全国の病院のロールモデルになれるよう、ママさん医師が活躍できるクリニックを目指します」

 

桑江さんの熱意にじかに触れたからだろうか、野田大臣は病院を後にするとき、「“こういう制度が邪魔している”ということがあったら、おっしゃってください。できる限りのことはやります!」と言って、桑江さんと固く握手を交わしたのだった――。